《食いこ》自然食品の店 近江屋商店(茨城・稲敷市)

茨城新聞
2022年10月23日

■生産者の思い届けたい

茨城県稲敷市中心地の商店街一角に店を構える自然食品の店「近江屋商店」。無農薬、無化学肥料で育てた野菜や化学添加物が入っていない食品などを厳選。「心豊かな暮らし」をコンセプトに掲げ、食材や食品を販売している。

店主を務めるのは、阿見町で無農薬にこだわり野菜を栽培する生産者、大箸卓史さん(35)。30歳まで都内で会社員として働いていたが、ストレスで肌荒れや脱毛に悩み続け、「自身の健康と向き合いたい。食と農を仕事にしたい」と脱サラ。パートナーが県南地域に住んでいたため阿見町を選び、2018年、農園「CLOVER FARM(クローバー ファーム)」を開園した。野菜や大麦などを栽培する傍ら、週4日は同店を切り盛りする。

「生産者」と「店主」の二足のわらじを履くようになったのは今年8月から。きっかけは、同店オーナーの山口博司さん(63)との出会いがあった。店は元々、つくば市内にあり、大箸さんは生産者として野菜を卸していた。だが、11年の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で、客層の大半を占めていた外国人が帰国。客足が途絶えてしまったという。

19年秋、店を稲敷市に移転。当初は山口さんの妻、恵以子さん(63)と二人三脚で営業していたが、恵以子さんの体調がすぐれず、今夏に長年、縁を紡いでいた大箸さんへバトンが渡された。山口さんは「(この店が)消費者の選択肢の一つになれば。若い人の考え方を入れて、どんどんチャレンジし、集客につなげてほしい」と期待を寄せる。

明治時代に建てられたという蔵造りの店内を見渡すと、柱や階段などに遠い昔の面影が色濃く残る。大箸さんが栽培する野菜の他にも、牛久市やつくば市など、近隣市町村の生産者たちが手がけた新鮮な野菜や卵、大麦などが並んでいた。大箸さんは「(ここの商品はどれも)じっくり時間をかけて栽培される分、野菜は味が濃く、香りがよい」と笑顔を向けた。

茨城県南産の穀類

 

「生産者の思いを一人でも多くの人に届けたい」。挑戦はまだ始まったばかり。今後は、販売にとどまらず、食と健康をテーマとした講座も開く予定だ。

■お出かけ情報
自然食品の店 近江屋商店
▽稲敷市江戸崎甲3046の2
▽営業時間は正午~午後4時(水曜日~土曜日)。
▽(電)029(875)3627
▽毎週日曜午前9時~正午まで、山新グランステージつくば中央入り口側で対面販売を行う。