半世紀の軌跡たどる 県立美術館開館50周年 第1弾企画展 えりすぐり作品270点

下野新聞
2022年4月23日

今年開館50周年を迎える県立美術館で、記念イヤーの展覧会第1弾となる企画展「題名のない展覧会-栃木県立美術館50年のキセキ」が始まった。同館のコレクションから特定のジャンルや時代にとらわれないえりすぐりの作品約270点を展示。個性豊かな収蔵品が一堂に会して、半世紀にわたる軌跡をたどることができる。6月26日まで。

同館は1972年11月、国内では先駆的な6番目の公立美術館として開館した。寄贈や購入による多彩なコレクションは約9千点、開催した企画展は240本に上る。企画展をはじめとした歴代の展覧会ポスターが、年別に並べられた展示は圧巻だ。

通常、企画展は1人の学芸員が手掛けるが、今回は若手学芸員4人が担当した。多岐にわたるジャンルを分担するのに加え、この機会にフレッシュな視点で新たな同館の魅力の掘り起こしも狙った。

名品のみならず、同館の調査研究で新たに芸術的価値を見いだした作品などを、学芸員のみが知っている裏話を織り交ぜながらその魅力をひもといている。担当した学芸員の1人、鈴木(すずき)さとみ主任研究員は「本県の魅力を再発見するなどし、県立美術館のこれからの50年を皆さんと一緒に考えていけたらいい」と話す。

4部構成の導入となるプロローグは、開館当時の建物模型、照明デザイナー石井幹子(いしいもとこ)さんのシャンデリアや工業デザイナー柳宗理(やなぎそうり)さんが同館のためにデザインを考えたスタッキングチェアなどを展示。アートの器ともいえる美術館自体にも趣向が凝らされていることを感じることができる。

第1部は、創設期に寄贈された濱田庄司(はまだしょうじ)や川上澄生(かわかみすみお)ら本県ゆかりの作家の作品、同館のシンボル的存在となっているモネの「サン=タドレスの海岸」やターナーの「風景・タンバリンをもつ女」などの名作が目を引く。橋本慎司(はしもとしんじ)技幹兼学芸課長によると「モネの作品の(1989年の)初公開時には、来館者数は通常の3倍になった」という。

第2部は同館が力を入れる調査研究で発見、再評価された作家や作品を、担当した学芸員のコメントとともに紹介。第3部は日本画、洋画、版画、写真・映像作品など同館ならではのコレクションが並ぶ。

第4部の「題名の“たくさんある”展覧会」は、タイトルをあえて伏せて、来館者に考えてもらう試みだ。鑑賞のポイントを読み作品に込められたメッセージを解釈し、題名を付ける体験を経て、アートを身近に感じられるだろう。

学芸員によるギャラリートークは5月15日、6月5日のいずれも午後2時から(新型コロナウイルスの感染状況により変更の場合あり)。(問)同館028・621・3566。

「推し」に投票を
 県立美術館は開館50周年関連イベントとして「もう一度見たい!県美コレクション総選挙」を行っている。投票は8月31日まで。

お気に入りの作品最大3点までを、お気に入りのポイントと合わせて記入して投票する。投票結果は今秋のコレクション展「みんなの《推し》コレクション!」に反映させるという。展示してほしい作品を広く一般から募るのは初めて。

投票用紙は企画展「題名のない展覧会」の会場で配布している。同館ホームページからも投票できる。投票者には抽選で、今秋のコレクション展と同時開催予定の50周年記念展「印象派との出会い-フランス絵画の100年 ひろしま美術館コレクション」の招待券が当たる。