「保存と創造」実践、設計図や建築理念紹介 古河歴史博物館で吉田桂二展

茨城新聞
2021年4月13日

古河歴史博物館と周辺景観の修景で日本建築学会賞を受賞した建築家、吉田桂二氏(1930~2015年)の企画展が古河市中央町3丁目の同館で開かれている。資料や書籍、遺品など約150点を展示。「保存と創造」の両立を実践した木造建築の第一人者の理念と実績を、同市に残る公共建築を通じて紹介している。会期は5月5日まで。

吉田氏は岐阜市出身。無人化した大平宿(長野県飯田市)を訪れ、町並み調査や保存活動に携わったのを機に、各地の古民家再生やまちづくり運動に関与。プレハブ式の建築が進む中、地域の風土を考慮した伝統的な木造建築を追求した。

古河市でも市民のまちづくり運動に関わる一方、古河駅東口広場のあずまやを皮切りに古河文学館、鷹見泉石生誕之地碑など16の公共建築物を設計。1990年に完成し、古河城出城跡の歴史的な景観保存に配慮した歴博は代表作となった。

同展は歴博開館30周年記念として企画。会場には吉田氏を紹介するパネルや歴博の基本設計図、建築前の外観図などが並ぶ。建築理念を絵と文字で記したかるた、同学会賞受賞で贈られた文鎮、愛用のカメラ機材、旅行時に描いた国内外の風景画なども興味深い。

手書きの基本設計図や立面図にはメモも残る。同市で最後に手掛け、2008年に歴博の隣地に移築された奥原晴湖画室の立面図には庭木まで細かい配置が記され、地域の風土や景観を考慮した吉田氏の建築理念の一端がうかがえる。

担当した倉井直子学芸員は「保存と創造に基づいた歴博を建築物として再認識してほしい。吉田氏が設計した市の公共施設の一つ一つから、あらためて古河のまちづくりを考えてもらえたら」と話した。

開館時館は午前9時~午後5時(入館は同4時半まで)。一般400円、小中高生100円。休館日は22、23、30日と5月5日を除く月曜。同館(電)0280(22)5211

地図を開く 近くのニュース