名槍のさや復元 結城蔵美術館で公開 結城・福井・島田3市交流で完成

茨城新聞
2015年11月10日

日本三名槍(そう)の一つ「御手杵(おてぎね)の槍(やり)」の拵(こしらえ)=さや=が、史実に基づいた熊の毛皮で新たに復元され、10日から結城市結城の結城蔵美館で一般公開される。毛皮は結城家ゆかりの福井市の関係者から、結城市に贈られて保管されていたものを使用した。拵を同市に寄贈した静岡県島田市の有志は「やりを通じて両市の文化や交流を発信していきたい」と話している。

 御手杵の槍は1574年作とされ、島田鍛冶の名匠・4代目五条義助が鍛えて結城家17代当主晴朝が愛用した。福井藩初代藩主の結城秀康から上州松平家へ受け継がれたが、東京大空襲で焼失した。

 熊皮の拵は長さ約1・6メートル。島田市の「御手杵槍顕彰会」代表、塚本昭一さん(80)が、美術職人の松浦昭さん(74)に依頼して復元。蔵美館が現在展示しているやりと牛皮の拵のレプリカも2002年、2人が中心となって作った。

 最初のレプリカ制作時、同会は熊皮を入手できずに牛皮で代用。その後、福井市の市民団体が熊皮を調達し、同市と友好都市を結ぶ結城市の結城朝光会、奥沢武治さん(70)が保管していた。

 塚本さんらは5月、史実に基づいた拵を作ろうと、申し出て熊皮を入手。2頭分の皮をなめし、きねの形に整えたヒノキの表面に貼り付けて、約1カ月かけて完成させた。

 拵には熊の頭部と前足も使われた。塚本さんは「史実には(頭部は)付いていないが、結城・福井・島田の3市の交流の証しを示したかった」と話す。

 蔵美館は昨年12月から、やりと拵のレプリカを常設展示。人気ゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」がやりを男性キャラクターに擬人化したのを機に、来場者数が月平均で300人以上増えている。

 市産業振興課の田中真一課長は「2人の尽力に感謝している。迫力ある拵を観光資源に活用したい」。塚本さんは「やりを通じて島田鍛冶の歴史を全国に知ってもらいたい」と話した。

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