偕楽園、魅力向上へ 陰から陽こそ真価 茨城県、「表門」入園誘導を促進

茨城新聞
2020年7月28日

偕楽園の魅力向上を目指し、県がハード、ソフト両面からの取り組みを加速させている。開園当初に込められた「陰と陽の世界」体感を促すため、これまで利用の少なかった正門に当たる「表門」からの入園誘導を始めたほか、園内の建造物を復元し飲食や休憩機能も充実させる。観光地としての魅力や利便性を高め、通年での誘客を進めていく。

■東門利用6割
偕楽園は水戸藩9代藩主徳川斉昭が文武修練のための藩校「弘道館」に対し、休息の場として1842年に開園。当初は現在の表門、南門に当たる2カ所に出入り口を設け、南門は千波湖からの水路として藩主や重臣ら、表門は庶民らがそれぞれ利用していた。

斉昭は「偕楽園記」で、弓を張ったり緩めたりする「一張一弛(いっちょういっし)」を例に、修業と休息の調和の重要性を説明。偕楽園ではこの調和を陰と陽の世界になぞらえ、表門からの竹林や杉林に包まれた閑寂な「陰」の世界を巡った後、好文亭や見晴広場からの眺望を「陽」の世界として表現し、心身の休養を促している。

表門からの入園が正式な経路とされる一方で、駐車場やJR偕楽園臨時駅からの利便性を背景に、観光客の多くが東門を利用し入園するケースが多い。県都市整備課によると、年間約100万人に及ぶ来園者のうち、東門利用は6割に上るという。

■出入り口制限
斉昭が偕楽園に込めた陰と陽の体感を促すため、県は表門からの入園を誘導する試験的な取り組みを始めた。5カ所に設けていた出入り口のうち、昨年11月の有料化で閉鎖した御成門に加え、4月には南門を閉鎖。6月からは吐玉泉料金所を出口専用とし、入園は表門と東門に制限した。

南側の桜山駐車場から偕楽園までの経路には、表門へ誘導するための案内板を約10カ所設置。さらに、園内の歩き方や斉昭の思想、陰と陽の調和について解説したパンフレットを新たに作成し、吐玉泉料金所で配布を始めた。

県弘道館事務所の小圷のり子主任研究員は「偕楽園の真価が発揮されるのが表門から入園するルート。文武修練により高ぶる心を落ち着かせた後、広大な景色の眺望で開放感を得ることができる。観光で訪れた方にも、この陰と陽の世界を体感してもらいたい」と話す。

■飲食機能充実
また、ハード面での魅力向上策にも乗り出す。5月には「偕楽園魅力向上アクションプラン」を策定。好文亭をはじめとする園内の歴史的建造物の耐震化や復元整備を通し、飲食機能やイベントの場を提供することで、通年での観光誘客を目指していく。

特に通年で飲食を提供する場を設けることで、観光客の回遊性向上や滞在時間の増加を促す方針。表門周辺に存在した番所や倉庫なども復元し、休憩所などとしての活用も見込む。

同課は「偕楽園に込められた思想をしっかり形にするとともに、観光客の利便性も高めていく。梅の名所としてだけでない歴史的な公園として整備し、100年後も200年後も利用してもらえる場にしたい」としている。

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