《食しる》納豆 奥深い伝統的な発酵食品 材料は大豆と納豆菌だけ

茨城新聞
2020年4月6日

 茨城県を代表する食材にまつわるあれこれを紹介していきます。1回目はご飯に合う納豆。大豆と納豆菌だけで造る伝統的な発酵食品は、水戸の名産として全国に知られ、健康食品として話題に上ることも多い県産品です。
 
 納豆は県内各地で製造されている。県納豆商工業協同組合(高野正巳理事長)には水戸市の4社など19社が加盟。高野さんは「全国の組合の中で茨城県の生産量は最も多い」と話す。
 
 高野さんによれば、納豆の起源はいつごろかはっきりしないが、わらつとに煮た大豆を入れたところ、わらに付いた納豆菌が繁殖し納豆ができたと考えられている。現在の納豆製造は、まず粒のよい大豆を選別し、洗浄。水に浸した大豆を蒸煮(じょうしゃ)する。納豆菌を吹き掛け、容器に詰める。約40度で18~20時間ほど発酵させ、冷蔵庫で約1日熟成させるという。
 
 ■応援団
 
 水戸市内のスーパーをのぞくと多種多様な納豆が並んでいた。大豆は小粒が主流。大粒や黒大豆も見られた。どの銘柄でもそんなに味は変わらないだろうと思っていたが、食べ比べてびっくり。風味も糸の引き具合もメーカーによって全く違った。
 
 そこで訪ねたのが、茨城町にある県産業技術イノベーションセンター。技術支援部フード・ケミカルグループ主任、久保雄司さんは、2006年に入庁し、10年以上納豆の研究開発に携わる。「納豆は実に奥深い。材料は大豆と納豆菌だけ、造り方も発酵商品の中では至ってシンプル。各社は大豆、納豆菌、造り方の特徴を生かしながら独自性を出している」と話す。
 
 研究室には蒸煮する圧力釜が据えられており、自ら納豆を造る久保さんは、「職人の勘」が各社の風味を生み出すと実感する。粒形や硬さといった大豆の状態で釜の圧力や温度などを変えて造る納豆は、わずかな圧力の違いも出来上がりに影響するという。
 
 同センターは主に県内の中小企業の製品開発や技術支援を行う。いわば地場産業の応援団。納豆の分野では、納豆の糸引きが少ない、普通の大豆より皮が硬めの黒大豆の仕上がりをよくするなどの特徴を持つ、今までにない納豆菌の育種を行い、企業と共に製品化している。
 
 その一つ、粘りを抑えた納豆菌は納豆になじみのない人でも食べやすく、乳児食や介護食の利用も視野に開発された。その納豆菌を使った糸引きの少ない納豆「豆乃香」が2015年以降、県内5社から発売されている。加工しやすいことから菓子類などにも製品化されている。久保さんによれば、特有の粘りはうま味成分として知られるアミノ酸の一種グルタミン酸が長くつながったポリ‐γ‐グルタミン酸と、果糖が長くつながったレバンという成分の混合物。
 
 ■郷土食
 
 茨城県の郷土の食べ物として挙げられるのが、そぼろ(しょぼろ)納豆と干し納豆。そぼろ納豆は塩漬けした切り干し(割り干し)大根と納豆をまぜて作る。干し納豆は調味した納豆を乾燥させた保存食。スーパーや土産品店などで見掛ける。
 
 明治時代、水戸駅で納豆が売られるようなり、水戸の名産として知られるようになった。水戸市観光課は2月、「納豆のまち水戸 攻略ガイド」を発行した。A3版二つ折りサイズで1万部を製作。水戸の納豆の歴史や水戸と納豆にまつわる話題、納豆料理が味わえる店などを紹介している。水戸駅の観光案内所などで配布する。同市のホームページから閲覧できる。

郷土食のそぼろ納豆(右)と干し納豆