《食いこ》お煎餅いおり庵(つくば市) 一期一会のおもてなし

茨城新聞
2019年9月22日

「お煎餅いおり庵」つくば本店は白壁の蔵造り風の建物。店内に季節の花が生けられた茶室と赤い野点(のだて)傘。コウヤマキやモミジなどの木々が植えられた庭につくばいや敷石が置かれ和の雰囲気を醸す。「一期一会のおもてなし。お客さまとの出会いを大切に、誰かを連れて行きたくなるような店にしたい」。茶道歴40年以上という社長の町田キミさんの思いだ。ゆったり煎餅を選べるようにと1杯の茶と1枚の煎餅でもてなす。

町田さんは長女の山壁やよいさんと1991年、夫が営む煎餅メーカーの自社ブランド店舗を常総市に開いた。「右も左も分からず商売を始めた」が「店を始めるなら茶室を造ってもてなしたい」。その一点は譲れなかった。現在は山壁さんが店長を務めるつくば本店ほか常総市、守谷市、東京都杉並区に店を構え、常総市の店以外は茶室がある。

4年前の9月、常総市山田町にあった本店が水害に遭い、移転を決意。つくば市の別の場所にあった店を現在の場所に移し、2017年につくば本店を開いた。町田さんは「水害の時は机の上まで水が来てもう駄目かと思ったが、これまでもピンチをチャンスにしてきた。娘が何とかなると声を掛けてくれ、喜びは倍に、悲しみは半分になった」と振り返る。

煎餅は国産米を使い、常総市の工場で製造する。堅焼き煎餅はしょうゆ味の「むらさき」、かつお節をまぶした「本節」、生地に糸切り昆布を練り込んだ「昆布」。ソフト煎餅はのりが付いた「京風味」、生地に青のりを練り込んだ「青のり味」、塩味の「さらだ味」。新潟県産コシヒカリで作る煎餅はその名も「コシヒカリ」。のりで挟む大きめの煎餅は「コンビニのおにぎりにヒントを得た」。

約10年前から「三筍最中(みたけもなか)」が加わった。閉店した常総市の老舗和菓子店から引き継いだ。北海道産小豆のあんと求肥(ぎゅうひ)は自家製だ。

「ふだん抹茶を飲む機会は少ない。作法は分からなくてもいいから、お茶を楽しんでほしい」と毎月、つくば、守谷、杉並の店で茶会を開く。

■お出かけ情報
お煎餅いおり庵つくば本店
▼つくば市面野井267の1
▼営業時間は午前10時~午 後6時
▼(電)029(868)3777

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