《食いこ》言の葉(茨城・笠間市) 信頼の有機野菜でランチ

茨城新聞
2023年9月30日

緑あふれる自然の中で、民家を改装した2階建ての店舗が趣を放つ「言の葉」(茨城県笠間市)。深い軒をたたえた入り口の引き扉には、歴史を感じさせる蔵戸を取り入れ、表側の取っ手は使い込んだきねの柄を代用するなど、店づくりへの愛情が感じとれる。「よくいらっしゃいました」。オーナーの二宮真美さん(56)が、飾らない笑顔で出迎えてくれた。

二宮さんは2009年、水戸市内に、骨董(こっとう)や家具、アクセサリーなどを扱うギャラリーをオープン。その後、常連客の要望で、まかない飯を出し始めた。

定番のおまかせランチ

紆余(うよ)曲折を経て、現在の笠間の地に移転したのが8年前。店名「言の葉」には、言葉の力を重んじる二宮さんの強い信念が込められている。「店が人と人とをつなぐ拠点になってほしい。そのつながりを育むのは言葉。お客さまが自由に言葉を交わし、さまざまな出会いが生まれてくれたらうれしいですね」

一方、病気がちだった自身の子ども時代や若い頃を振り返り、健康を取り戻す食として行き着いたのが、農薬や化学肥料に頼らないオーガニックの考え方だった。長年の付き合いで県内外の有機野菜農家と信頼を築いて供給が約束され、料理素材に確実に使えるようになった。

店内の家具などは古いものを再利用している

基本的には当日、店にある野菜をもとに、スタッフおまかせのランチを提供する。さらに個性豊かな器が、食事を華やかに演出する。麦わら帽子をひっくり返したようなフォルムは、二宮さんが懇意にする陶芸家に特注したという。

この日、器に盛られたのは7品。真ん中で存在感を示すのが、大豆ミートで作った唐揚げ風の総菜。食感は鶏の唐揚げのように弾力にあふれ、かむほどにうまみが広がる。器の縁部分は、沖縄のラフテー風に仕上げたお麩(ふ)をはじめ、ゴーヤのつくだ煮、カボチャの皮と実をすりつぶしたカボチャ餅、おからのサラダなどで彩られていた。

器の隣におにぎりのように添えられたご飯は、自家栽培のササシグレを使用。みそ汁は野菜の重ね煮で、だしを取った。

「見て楽しみ、最後に腹で満足していただければ」と二宮さん。箸を進めていくと、作り手の農家を想像するような、旅をしている気分になった。

■お出かけ情報
言の葉
▽笠間市笠間4170の25
▽営業時間は、午前11時半~午後5時
▽休業日は、日、月、火曜 ランチは木、金、土曜日のみ(完全予約制)
▽(電)0296(85)5402