《食いこ》フロマジェリーつくば(茨城・笠間市) 仏で修行、チーズ熟成中

茨城新聞
2023年4月26日

茨城・笠間産の牛乳を使い、10種類以上のチーズを手がけている「フロマジェリーつくば」(茨城県笠間市)。代表の川田訓さん(50)が2022年9月から1人で生産を始めた。

約100グラムのチーズを作るのに、およそ10倍の牛乳が使われており、「チーズは牛乳の栄養がぎゅっと詰まっている。おいしく食べて健康につなげてもらいたい」と思いを込める。

川田さんは大学卒業後、農林水産省を経て、独立行政法人職員となった。乳用牛の改良や管理方法に関して、酪農家の相談に乗るなど乳用牛に関する幅広い仕事に従事。働く中で、牛乳の大量廃棄により、酪農家が苦悩する様子を間近に感じ、「なんとかしたい」と考えていたところ、何げなく食べたフランス産チーズの味わいに魅了された。「おいしいチーズを作ることで乳製品の消費につながり、酪農家の助けになれば」。心機一転、チーズ職人を志した。

退職後、45歳で渡仏。2年間、語学を学びながら乳製品の専門学校やチーズ工房で研修を積んだ。講義内容を必死でメモし、技術の習得に努める日々を過ごして帰国。チーズが徐々に熟成し、味や色が変わる様子など「出来上がる工程が面白い」と製造に没頭する。

チーズの原料、凝乳を型に流し込む

心がけるのは、学んだ味を再現しつつ、毎日食べてもらえるチーズにすること。川田さんがチーズ作りを学んだフランス東部にあるドゥー県のチーズは、塩気が控えめな印象だったといい、「どんな料理とも相性が良く、日常食べてもらえる味」と話す。

生み出すチーズは、クリーミーで滑らかな口当たりの「フロマージュ ブラン」や、長期間熟成させることで深いうまみが感じられる「トム」など、味わいや食感はさまざま。酵母や乳酸菌といった微生物の違いや、熟成期間の長さでチーズの種類が変わるという。工房内にある熟成室では、約60個のチーズがずらりと並び、飲食店やパン屋に出荷される日を待っていた。

セミハードからソフトタイプまでさまざまなチーズを手がける

自身の工房でチーズを作り始めて約半年。よりおいしいものを届けようと、反省点を洗い出して改善するなど、品質向上のための努力を惜しまない。今後は、県産野菜や肉といった特産品とのコラボが目標だ。チーズの可能性を信じ、「多くの人に味わってもらいたい」と力を込めた。

■お出かけ情報
FROMAGERIE つくば
▽工房の住所は、茨城県

チーズの原料、凝乳を型に流し込む笠間市市野谷小島1305の1(直販店ではないので注意)
▽問い合わせはmail-support@fromagerietsukuba.co.jp
▽ホームページはhttps://fromagerietsukuba.co.jp
▽チーズは「パンヤ・クルート(水戸市米沢町379の12)」で販売中。