バンクシー風の絵増加 茨城・高萩の防波堤 行政苦慮、観光と板挟み HP

茨城新聞
2023年8月27日

正体不明の路上芸術家、バンクシーの作風に似た絵が2019年に茨城県高萩市高浜町の防波堤で見つかってから4年余り。同種の絵が増え続け、「落書き禁止」の看板を設置する事態に発展する一方、絵を見るために県内外から観光客が訪れ、観光名所として認知されるようになった。公共施設への落書きと、市内への誘客につながる観光資源との両面があり、関係者は扱いに苦慮している。

バンクシーは、英ロンドンを中心に活動し、建物の壁や橋などに社会風刺を込めたグラフィティ(落書き)を残している。18年には赤い風船と少女を描いた絵画がオークションで落札された直後、額縁に仕掛けられたシュレッダーが作動し絵が細断され、世界的に注目を集めた。

高萩市の防波堤に描かれた絵は、細断された作品と酷似。市観光商工課によると、話題になってから観光客が訪れ、写真映えスポットになっているという。同課は「公共施設への落書き。犯罪行為なので、PRは行えない」と頭を悩ませる。

防波堤を管理する県高萩工事事務所河川整備課も「扱いが難しい」。当初は観光客に配慮し、静観してきたが、理由は不明としながらも、ここ1年で絵が急増。このため今春、落書き禁止を訴える看板を絵の近くに設置した。

だが、設置した看板に記された「落書き禁止」の文言の上に「バンクシー以外の」と書かれたり、「落書きは犯罪です」との警告が塗り潰され、「アート海岸指定区」と落書きを助長・許可しているように見える落書きが目立つようになった。看板の落書きを消しても再び書かれ、いたちごっこに事態に陥った。同課は「悪質化している。そろそろ、大なたを振るうしかない」と堤防の絵を消す選択も視野に検討を始めた。

観光客からは「行政が困るのも理解できるが、地域活性化につながるのではないか」との声も上がる。埼玉県加須市から家族で海水浴と絵を見に来た赤坂翔太さん(36)は「このようなアートがあったら、町おこしの一つになる。他の海にはないので、観光客を呼ぶのに優位になる」と地域活性化に一役買うとの見方を示した。