《いばらき御朱印めぐり》稲敷・大杉神社 病魔払うあんばさま HP

茨城新聞
2023年7月5日

■川や海から信仰広まる

朱や黒に金色がちりばめられたきらびやかな社殿。柱や梁(はり)には、青龍(せいりゅう)や白虎といった霊獣が精巧に彫られている。まるで日光東照宮。豪華な建物群について市川久仁守(くにもり)宮司は「庶民の願いをかなえてきたのが大杉神社。将軍の神社・日光東照宮をこの地に再現した。『あんばまわれば日光見るに及ばず』ともいわれてきた」と説明。江戸時代には病魔払いの「あんばさま」として信仰を集めた。現在でも670社の総本宮である上、さまざまなパワースポットが注目を集めている。

大杉神社の境内にある勝馬神社。競馬関係者らが訪れる

御朱印は、かつてのご神木で「あんばさま」と呼ばれた太郎杉を中心に、神の使いである「ねがい天狗(てんぐ)」と「かない天狗」が左右に控える。

創建は神護景雲元(767)年。当時、霞ケ浦をはじめ、利根川の下流域を含む「常総内湾」に張り出す突端(とったん)状の地形で、海上交通の要衝だった。ここに樹齢1000年を超す巨大な杉があり、神木としてあがめられた。地名を取って、巨大な杉は「あんばさま」と呼ばれた。

その後、鎌倉時代が始まろうとしていた文治年間、この神社にいた巨体で紫髭(しし)、碧眼(へきがん)、鼻高だった常陸坊海尊(かいそん)を慕う民衆に、海尊の風貌に似た天狗信仰が始まった。

江戸時代には、天然痘の俗称「疱瘡(ほうそう)」を退治する神として信仰される。同神社の天狗が風を吹かせて病魔を退けると信じられ天狗面が貸し出されたり、守り札が配られたりした。川や海の交通網に沿って茨城や千葉、利根川上流、さらに東北地方の太平洋沿岸地域などへ広まった。

大杉神社御朱印

水上交通から陸上への転換などで神社の勢いは衰えたが、最近はパワースポットとして人気を高め、コロナ前には年間50万人が参拝した。

御利益として「悪縁切り」があるのが特徴。土器(かわらけ)を割ったり人形(ひとかた)に願いを書いて奉納する。「悪縁切りに踏み込むのには勇気がいったが、良縁を求める裏返し。庶民の願いとして、受け入れられたのでしょう」と市川宮司。

また境内社として設けた勝馬神社へ、競馬関係者をはじめ競馬ファンが後を絶たないという。台風で枝が折れたシイに馬頭のような形が現れ、評判になっている。

格式の高い豪華なトイレも目を離せない。妖怪を描いた「九十九神(つくもがみ)の間」や鳥獣戯画図などが驚きを誘う。ぜひ体験したい。(第1土曜日掲載)

■メモ
アクセス…圏央道稲敷東インターから国道125号を右折、約3キロ。
住所…茨城県稲敷市阿波958
電話…029(894)2613
受付時間…午前8時半~午後5時
御朱印…書き置きタイプは大杉神社はじめ稲荷神社、天満宮、勝馬神社など8種あり各500円。カラー図版は1000~1500円。1日から御朱印帳への記入も再開する。