《食いこ》マイルストーン(水戸市) ジャズBGMにコーヒー

茨城新聞
2023年6月9日

今年38年目を迎えたマイルストーン(水戸市)。店名は「里程標」の意だが、ジャズファンならば帝王、マイルス・デイビスの同名アルバム-こちらはSが付く複数形-を想起するに違いない。代表の栗原誠さん(80)はジャズ好きで、低く流れる店のBGMはジャズ。店先に鎮座する周囲4メートルほどの巨石は店の象徴だ。

店の象徴の大岩。シルエットは店のロゴにも使用されている

 

「入れ方のこつを教えたり、豆を売ったり。お客さんとのやりとりで教えられたことも多い。カウンターは私にとって教室。本当にありがたい。コーヒーに感謝です」と栗原さんは振り返る。

仕事や人間関係の悩み、転勤なども重なって、会社員人生に見切りをつけた栗原さん。妻に相談もせず、思い切って脱サラしたのが38歳。「自分にもできそうだ」と喫茶店経営を目指したがしかし「気楽に片手間でできる仕事ではない」と分かり、気を引き締めて取り組んだ。

当初から自家焙煎(ばいせん)をしたいと考え、同様の店で豆の焙煎、コーヒーの抽出、経営などをつぶさに学んだ。修業時代を経て現在地からやや東の根本町に開店したのが1985年。こぢんまりとした店だったが、店内中央の「マイルストーン」が圧倒的な存在感を放っていた。ちなみに先に石を据え付け、後から店を建てたという。

以来、那珂川の氾濫、道路拡幅による現在地への移転、東日本大震災を乗り越え、栗原さんはカウンターに立ち続け、コーヒーを入れてきた。「1粒の欠陥豆は50粒に悪影響を及ぼす」ため、悪い豆を取り除くハンドピックは今も欠かさない。

サイホンで入れるコーヒーは甘み、苦み、酸味のバランスが取れ、こく深く、癖がない。後引く味わいで冷めてもおいしい。一滴一滴抽出する水出しコーヒーは、香ばしさとともにほのかなフルーツ香が立ち、酸味のないすっきりとした味わいが出色だ。

焙煎機で最適なロースト具合を確認する栗原稔さん

 

豆の仕入れ、焙煎を一手に担うのは息子の稔さん(50)。香ばしくデリケートな味に仕上がるじか火型焙煎機を開業以来使い続けている。ピザ、各種トースト、モーニングセットにも力を入れる。「メニューを少しずつアップデートしている」と話す稔さんがこれからの主役だ。


■お出かけ情報
マイルストーン
▽水戸市金町2の5の41
▽営業時間は午前9時30分~午後6時30分
▽定休日は毎週月曜、火曜日
▽駐車場は店舗正面と裏手にも
▽(電)029(231)9123