《旬もの》温州ミカン(茨城・桜川市) 酸味と甘み 2度おいしい
「〽み~かんの花が~咲いて~いる」とうろ覚えの歌を口ずさみながら、うねうねと続く細道を車で上り切った先に観光ミカン園、酒寄マルミズみかん園はあった。記憶をたどると幼い頃の正月、こたつの上のザルに盛ったミカンが思い出される。昔から日本の風景にはミカンがあった。
ミカン産地といえば気候温暖な瀬戸内海や太平洋沿岸が思い浮かぶが、ここ筑波山の西側斜面、茨城県桜川市真壁町酒寄にも、0・5~1・4ヘクタールの観光ミカン園8軒があり、10~12月上旬までミカン狩りができる。温州ミカン栽培の北限地の一つとされる。
同地の温州ミカンは「酸味と甘みのバランスがこくのある味わいを生む。収穫直後は酸味が勝るが、日を経て甘くなる感じ」と8軒を取りまとめる酒寄観光みかん組合の酒寄一郎組合長(73)。
話を聞きながら厚めの皮をむき、口に含むと酸っぱさが先に来る。しかし程なく甘みとかすかなえぐみがバランスよく広がり、かみ応えある果肉とともに2度おいしい。昔こんなミカン食べたな-と記憶を呼び覚ます味だ。
酒寄組合長によると、三方を斜面で囲まれた盆地状の一帯に、日中暖められた空気が滞留し、霜の少ない環境がミカンの栽培を可能にしたという。海抜170メートル付近に位置するミカン園では、夜間ふもとがセ氏0度のときでも5、6度を保ち、「オートバイで上ってくると明らかに気温が高いことを体感できる」。
「昔の人も自然がつくり出す斜面温暖帯を知っていてミカンを作り始めたのだろう」と、約120年前に始まった同地のミカン栽培の経緯を推測する。その当時栽培していたのは温州ミカンではなく、筑波山周辺の特産「福来(ふくれ)みかん」だった。
直径3~5センチと小さく、強い酸味、爽やかな香りが特徴。皮を乾燥させて七味唐辛子などに加え、直売所などで販売している。酒寄地区でも作っていたが、収穫に手間がかかり、同組合内でも栽培しているミカン園は2軒だ。
最後においしいミカンの選び方。日がよく当たる木の外側、皮の色が濃く、つやがあるものがよい。木や場所、園によっても味が異なり、食べ比べも楽しいという。
■メモ
温州ミカン
▽酒寄観光みかん組合マルミズみかん園の住所は桜川市真壁町酒寄1946
▽(電)0296(54)4435
▽ミカン狩り入園料、大人(中学生以上)400円、子ども300円、持ち帰りは1キロ300円、時間制限なし。営業は12月上旬まで。