うつろ舟 茨城県に伝わるUFO?伝説 美術界も注目
常陸国の海岸にUFO(未確認飛行物体)のような奇妙な物体と1人の女性が漂着したという江戸時代の伝説「うつろ舟奇談」に今、アート界が注目を寄せている。本県北部を舞台に開催中の「茨城県北芸術祭」(~20日)では海外作家がうつろ舟に焦点を当てた作品を展示。また、森美術館(東京・六本木)の企画展「宇宙と芸術展」(~来年1月9日)では、うつろ舟奇談を伝える江戸時代の瓦版刷物の複製展示のほか、うつろ舟を模したグッズも販売。約200年前から伝わる伝説が今、さらなる広がりを見せている。
県北芸術祭では、日立市川尻町の小貝ケ浜緑地に「虚舟ミニミュージアム」と題した作品を展示。他の華やかな作品に交じった異色の作品だ。インターネットで情報を得て、うつろ舟奇談に関心を寄せていたインドネシア人の現代美術作家、ヴェンザ・クリストさんが手掛けた。いくつかの史料のイメージを掛け合わせて作ったうつろ舟の模型やうつろ舟に関する記事を掲載した本紙紙面、関係者などへのインタビュー映像などを展示。同祭事務局は「地元のお客さまから『茨城にこんな伝説があったのか』との声がある」と語る。
森美術館の「宇宙と芸術展」では、芸術の中で表現されてきた、宇宙に関する世界中の美術作品などを紹介している。日本初公開のレオナルド・ダビンチが書いた天文学手稿やチーム・ラボのインスタレーションとともに、うつろ舟奇談を伝える史料の万寿堂「小笠原越中守知行所着舟(複製)」(「漂流記集」より、江戸時代後期、西尾市岩瀬文庫蔵)を展示。同館は「人間が宇宙人としてイメージしてきたものの系譜を見せたい」と話す。また、うつろ舟を模したどんぶりなどの関連グッズも販売し、人気を集めている。
ジャンルを超え、国内だけでなく海外での関心も広まるうつろ舟。長年研究を続ける岐阜大の田中嘉津夫名誉教授は、伝説の魅力を「200年前の文化のほか、科学や芸術など多くのさまざまな要素を含んでいる。オカルト的に注目されている部分もあるが、世界中でうつろ舟に関するインターネットサイトも増えてきている」と話す。
★うつろ舟奇談
常陸国の海岸に奇妙な物体と女性が漂着したという江戸時代の伝説。2014年に発見された新史料で漂着地が「常陸原舎り濱」とあり、田中名誉教授の研究で現在の「神栖市波崎舎利浜」が浮かび上がった。曲亭馬琴の「兎園小説」(1825年)や、柳田国男の「うつぼ舟の話」(1925年)などで伝説について書かれている。
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