桜川「真壁のひなまつり」開幕 被災石蔵 華麗に復活 8年ぶり人形展示

茨城新聞
2019年2月5日

桜川市真壁地区で4日、「真壁のひなまつり 和の風第十七章」(3月3日まで)が開幕した。会場の一角に東日本大震災で被災した石蔵がある。今回修復され、8年ぶりにひな人形が飾られた。石蔵は2003年の初回から参加し、真壁のひなまつりの原点とも言える場所。再開の今年は、ひな人形のほか、これまでの催しを振り返る写真や資料なども展示。関係者は「ここからまた新たな交流が生まれたら」と、8年ぶりの開場を喜んでいる。

暖かい陽気に包まれた初日。入り口が真新しい木材で修復された石蔵に、「蔵布都(くらふと)」と書かれたのれんが8年ぶりに掛けられた。

石蔵は、大正時代に建てられた登録文化財で、酒蔵「村井醸造」が所有。02年に呉服店を営む柳田隆さん(61)が借り、着物や織物文化を発信する染織サロン「蔵布都」として展示や販売を行っていた。

同時に石蔵は、住民らが集い、まちづくりを熱く語り合う拠点となった。その中で開催につながったのが、真壁のひなまつりだ。

石蔵は、初回から大正時代のひな人形を展示。情報発信の拠点としても親しまれ、期間中は観光客であふれた。しかし、11年3月、東日本大震災。入り口の大谷石が大きく崩れ、以降、使えなくなっていた。

昨年、ようやく修復工事が完了し、柳田さんは再び蔵を開けた。何か飾れないかと考えたとき、思い付いたのはやはりひな人形だった。ほこりがかぶった蔵の中を片付け、今年の開幕に間に合わせた。「準備していてもうれしくてね」。そう振り返る柳田さんの顔がほころぶ。

入り口に飾られたのは、1918(大正7)年の七段飾り。近所の女性(100)が祖父から贈られた人形で、豪華で貴重な逸品だ。21軒で始めたひなまつり初回、女性が「あなたのところで飾って」と申し出てくれたゆかりの品だ。

「当時、私たちの活動に弾みをつけてくれた大切なひな人形」と柳田さん。蔵が使えなくなってからは、柳田さんの呉服店で飾ってきたが、「やっぱり、この人形の展示場所はここだ」とほほ笑む。

再開した石蔵には、ひな人形だけでなく、これまでのひなまつりの写真を壁いっぱいに展示した。初回のパンフレットなども置き、ひなまつり資料館のような趣となった。おもてなしのコーヒーも用意した。

染織サロン「蔵布都」としては、4月に本格再開を予定している。

8年ぶりに石蔵で開幕を迎え、「こんなにきれいになりましたと感謝の気持ちでいっぱい」と柳田さん。「来てくださった皆さんに恩返しがしたい。初心に帰って、ここからまた新たな交流が生まれたら」。喜びと期待で胸をふくらませている。

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