茨城県北芸術祭 作品を見に行く(1) 日立、工業都市にアート融合

茨城新聞
2016年9月22日

県北6市町を舞台に、11月20日まで開かれている本県初の国際アートフェスティバル「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」。30会場で計約100作品が公開されている。同芸術祭の取材に携わる記者が注目した作品を見に行く。

日立市内は、JR日立駅を中心に8カ所で計25作品を見ることができる。
工業都市・日立市を築いた壮大な時間と歴史に思いをはせながら、自然と共存する作品、参加者も一緒に体験できる作品を訪ねた。
まずは近年、パワースポットとしても人気が高い御岩神社。鳥居をくぐると、参道を囲むように杉が立ち並び、神聖な空気に満ちている。両脇を流れる沢の音を心地よく聞きながら社の一つ、斎神社に着く。同神社の天井には岡村美紀さん(25)が手掛けた雲龍図がある。御岩山の上空を飛行する龍を上から描いた、新しい視点の天井画だ。
さらに奥にある御岩神社の脇には、森山茜さん(33)がインスタレーション(空間表現)「杜(もり)の蜃気楼(しんきろう)」を展開。極薄のフィルム6千枚を使い、幅3メートル、奥行き24メートルもの立体を作り上げた。風や日の当たり方によって作品が変容する。森山さんは「環境に反応する作品を作りたかった。とても長い歴史がある御岩神社だからこそできた作品。感じるままに楽しんでほしいが、日が差し込む朝がお勧めかな」と話す。
次に訪れた常陸多賀駅前商店街では空き店舗を活用。9組の作品が隣接し集中的に楽しめる。地域とアートが融合した開かれた空間があった。
旧銀行の2階には、ビニールやプラスチック素材を使って商品開発を行う架空の会社が出現。藤浩志さんの「ポリプラネットカンパニー」だ。部屋には、藤さんが約20年間収集したおもちゃや廃材がぎっしり。制作工房もあり、来場者が〝商品〟を作ることもできる。福島県郡山市から来た若林奏汰君(6)は車を手作り。「自分で作れるなんて思わなかった」と満足げ。母親の亜以子さん(31)は「おもちゃ箱の中にいるみたい」と笑った。
旧銀行近くの多賀パルコでは、和田永さん(29)が、地域で集めたブラウン管テレビや扇風機などを楽器に変えて、不可思議な音を鳴らしていた。和田さんは「日立は街全体がテクノロジーで栄え続けている街。古い家電を一種の妖怪として呼び覚まし、一緒に戯れたい」と力を込めた。会期中もこの場所を基地に楽器作りや合奏を続け、11月19日には日立シビックセンターなどで市民参加型のコンサートを行う予定だ。

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