《食いこ》栗のいえ(茨城・笠間市) 世界に誇る創作スイーツ

茨城新聞
2022年9月19日

2021年7月、茨城県笠間市土師の国道355号バイパスから少し入った所に立つ築130年の古民家カフェの後に代わってオープンした。フランスのミシュランガイド三つ星店やマカオの高級ホテルでパティシエを務めた笠間市出身の竹内孝弘さん(48)がオーナーシェフだ。

県産食材を使ったケーキや焼き菓子、いわゆるスイーツの店だが、なんといっても地元笠間産の栗を使ったモンブランの人気が高い。

こんもりと盛られた栗ペーストはいかにも栗含有率が高そうで、スプーンですくうとほろほろとこぼれ落ち、慌てて口に入れた。より深く味わおうと舌を動かすと、まろやかな甘みが口に溶け広がり、栗の香りが鼻に抜ける。と同時に栗の粒々感が次の一口を促す。うまさは人を黙らすというが、やがて「これは栗だ」といささか間抜けな言葉が口をついて出た。

日本におけるフランス伝統菓子の第一人者、河田勝彦氏の下で竹内さんは修業をスタートした。才能を見込まれ、店で重用されるまでになったが、さらなる飛躍を期して渡仏した。

月給3万円の助手から、やがて生地作り、焼き、チョコ、仕上げなどを経験し腕を磨いた。信頼を得て仏版ミシュラン三つ星店「ガニエール」の副料理長パティシエも務め、同東京店ではシェフパティシエまで上り詰めた。「世界のVIPを迎える日々の緊張感は特別だった」と当時を振り返る。

その後マカオのホテルに移った竹内さんが、生まれ育った笠間で開業を模索し始めたのは帰国した19年。「日本や地元を外から見られ、逆に魅力に気付けた」ときっかけを話す。改めて見回せば茨城にはメロン、イチゴ、ブルーベリー、ブドウ、ナシ、カキ、リンゴなどさまざまな果物が豊富。野菜やハーブ由来のスイーツピューレやソースの材料にも事欠かない。

県内や福島県から仕入れた旬の果物

 

今や世界のどこにいても情報は入り発信もできる。「『タケウチの菓子が食べたい』と来てくれるような創作スイーツを作ることで、地元の活性化にも貢献できるはず。生産者とつながり、地域の人を巻き込んで魅力を発信できれば」と新たな地平を見据える。

■お出かけ情報
栗のいえ
▽笠間市土師1285の25
▽営業時間は午前10時~午後6時半。イートイン午後0時半から。
▽定休日は月、火曜日
▽(電)0299(57)2728
▽モンブランに飲み物付きのセットも楽しめる。