手紙に故郷への思い 「香川敬三」にスポット 茨城・常陸大宮 親子の書簡通し紹介
幕末から明治維新に活躍し、伯爵となった茨城県常陸大宮市出身の香川敬三(1839~1915年)にスポットを当てた「香川敬三の手紙Ⅲ」が、同市北塩子の市文書館で開かれている。明治30年代の宮内省勤務時代の敬三と、同じく宮内省に出仕した娘の志保子の故郷との関わりについても、新たに発見された親子の書簡17通を通して紹介する。
歴史に埋もれてしまいそうな地域の逸材を同館が改めて紹介しようとする企画展で、香川が宮内省関係者に宛てた手紙を中心に展示した3年前の「香川敬三の手紙」、2年前の「香川敬三の手紙Ⅱ」に続く第3弾。敬三ゆかりの旧家から関係史料が寄託され、初公開のものもある。和装の敬三の写真も公開されている。
香川は、同市御前山地区の下伊勢畑出身。蓮田家の三男として生まれ、神官、鯉沼家の養子になった。少年時代に藤田東湖に学んだ後、改革派として活動する中、岩倉具視と出会い倒幕運動に身を投じた。明治維新後は宮内省に入り、明治天皇の皇后の側近(皇后宮大夫)として仕え、爵位制度ができると、子爵、伯爵を授与された。
水戸藩出身者では異例の栄進を遂げた人物で、故郷に対しても、学校や道路整備の資金援助や「香川金」といわれる事業資金に活用された基金の提供など行っていた。
香川親子の書簡17通の中には、かつての主(あるじ)で戊辰戦争で敵となった徳川慶喜について、公爵を授かることや皇室との融和を喜ぶ内容の記述がある。また、娘・志保子とともに故郷を出たことに対し「実に罪の多いことで一言の申し訳もできません」と平謝りし、新政府での栄達の一方、故郷へ寄せる深い思いを示している。
来場者には、展示解説パンフレットを無料配布する。同書の企画・編集を行い、展示解説も担当する同館の高村恵美係長は「故郷を離れた敬三親子だが、昭憲皇太后に奉仕する任務の傍ら、自身のルーツである故郷に思いを寄せ続け、縁者と緊密に連絡を取り合っていた」と話す。
3月27日まで。午前9時~午