日本画、150年の歩み 茨城県近代美術館で6月20日まで 時代に即した変化追う

茨城新聞
2021年5月12日

新たな時代にふさわしい日本画の創造を目指した画家たちの歩みをたどる企画展「日本画の150年 明治から現代へ」が、水戸市千波町の茨城県近代美術館で開かれている。明治維新による社会の変動が、美術の分野にどう影響したのか。時代ごとに展示された84点を通して検証する。

同展は近代以降の150年を4章に分けて構成する。日本画という伝統的な枠を超え、現代へと続く道筋を案内する内容だ。

幕末から明治にかけて西洋絵画が日本に紹介されると、従来の日本画にない写実的な表現に注目が集まった。ここから、岩絵の具や和紙といった伝統的な画材を基盤に、西洋絵画の表現を取り入れる画家たちの試みが始まった。

「明治期」は幕末からの流れとともに、横山大観や菱田春草らが空気感や内面的な感情をどう表現するかに試行錯誤した模様をたどる。展示された明治期の大観、春草の額装作品は、北茨城市の五浦に移住する直前、師の岡倉天心に従って渡米した際に描かれ、里帰りした作品だ。

「大正から昭和戦前」にかけては、芸術の自由が掲げられ、独創的な作品が生まれた。写実表現と細密描写を追求した速水御舟は影響を受けた一人。今展では、御舟の制作過程を知る貴重な習作やスケッチ9点を間近に見ることができる。このほか小川芋銭「石非羊」や、長さが17メートルもある小林巣居人の絵巻「土機光象」(上下)、「水辺画巻」も見どころ。

続く「受け継がれる美」は美人画や歴史画、花鳥画が並ぶ華やかなコーナーになっている。目を引くのは、森田曠平「女神春秋 花鎮め」。桜が散る頃に疫病が飛び散るという言い伝えから、それを鎮めるための鎮花祭の様子が色彩豊かに描かれる。

「昭和戦後から現代へ」は、敗戦で激しい批判の対象となった日本画が、時代に即していかに変化してきたかを追う内容だ。

和紙や人工岩絵の具などの普及に後押しされ、大きな和紙に色を厚く塗り額装するスタイルが定着。片岡球子、那波多目功一、フジイフランソワなど、日本画ならではの技法を継承し、独自の表現を開花させた作家たちの作品が鑑賞できる。

那波多目功一「寂光」(2013年、同館所蔵)

6月20日まで。入場は予約優先制。(電)029(243)5111

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