母の田舎そば 受け継ぐ 休業3年 長女が名店復活 大正創業の「なが井」 中之条・四万温泉

上毛新聞
2021年11月13日

 大正時代に四万温泉(中之条町)で創業し、多くの人に親しまれてきた「蕎麦処(そばどころ)なが井」が14日、およそ3年の休業期間を経て「Cafe&蕎麦 なが井」としてリニューアルオープンする。長年、一人で切り盛りしてきた先代の長井美津江さんが今年4月、91歳で他界。「のれんを絶やしたくない」と母の味を受け継いだ長女の岡田ふみ恵さんが店舗を復活させる。

 なが井は、大正13(1924)年にふみ恵さんの祖父母が創業。俳優の故児玉清さんや歌舞伎俳優の故中村勘三郎さんら著名人も訪れたことがある。本県で83年に開かれたあかぎ国体の際には、町役場を訪れた昭和天皇に昼食としてそばを振る舞ったという。

 皮ごとひいたそば粉を使い、黒みがかった麺や濃いめのつゆなど美津江さんが手掛けた「素朴な田舎そば」は、地元住民や観光客の人気を集めた。だが、3年ほど前に美津江さんが体調を崩し、店は休業した。

 ふみ恵さんは数年前から店を手伝う傍ら、母のそば打ちの技術や味を学んだ。美津江さんの病気療養を機に、自身が運営会社の専務を務めるバッティングセンター「ベースボールパークファースト」(前橋市)と、ゴルフ練習場「ファーストゴルフ倶楽部(くらぶ)」(高崎市)に併設するカフェでそばを提供するなど、復活に向けた準備を進めていた。

 開店準備中には、店の前を通り掛かった人たちから「昔来たことがある」「再開を待っていた」などと声を掛けられたというふみ恵さん。「母が生きているうちに…」との願いはかなわなかったが、「なが井の思いを引き継ぎながら、来たことがある人も新たに訪れる人も満足できるお店にしていきたい」と意気込む。

 当面は日曜のみの営業とする。手打ちそばは20食限定だが、カレーやオムハヤシなどを用意するほか、コーヒーや紅茶、そば粉を使ったシフォンケーキなども提供する。

 12、13の両日に関係者を招いてプレオープンし、14日に正式オープンする。営業時間はランチタイムが午前11時~午後2時。カフェタイムが午後2~4時。問い合わせは同店(0279-64-2412)へ。