日本遺産に里沼 文化、産業、生活 観光振興へ発信 館林市が申請 本県2件目

上毛新聞
2019年5月22日

 文化庁は20日、地域の有形・無形の文化財をテーマごとにまとめ、魅力を発信する「日本遺産」に、館林市が申請した「里沼(SATO―NUMA)―『祈り』『実り』『守り』の沼が磨き上げた館林の沼辺文化―」を認定した。茂林寺沼、多々良沼、城沼の三つの沼を「里沼」と定義し、地域の歴史を紹介するストーリー仕立てで、市は今後、観光資源として積極的に発信していく。本県関係の認定は2015年の「かかあ天下―ぐんまの絹物語」以来2件目。

 「里沼―」は、600年前に開山した茂林寺に隣接する茂林寺沼を「祈りの沼」、中世以降に造られた用水により小麦文化の発展に寄与した多々良沼を「実りの沼」、館林城の外堀の役目を果たした城沼を「守りの沼」とそれぞれ位置付け、三つの沼が館林の文化や産業、市民生活と密接に関わってきたことを38の文化財と共にストーリー展開する。

 茂林寺沼に関連する文化財は貴重な動植物が生息する低地湿原や堀工町のどんど焼き、多々良沼は用水を造った大谷休泊の墓や漁具、城沼は国名勝「躑躅ケ岡」や渡し舟など。正田醤油旧店舗や日清製粉館林工場事務所など産業に関わる物件に加え、うどんや麦落雁、川魚を食べる食文化も盛り込んだ。

 文化庁は「沼に焦点を当てた点が面白い。観光を軸とした取り組みも具体的」と評価した。第5弾の今回は里沼を含む21道府県の16件を新たに認定し、日本遺産は計83件となった。

 活用に向けて市は本年度一般会計当初予算に、沼辺文化推進事業として190万円を計上。多々良沼でカヌーやカヤック体験を試験的に行う予定だ。

 認定証交付式が同日、都内で開かれ、出席した須藤和臣市長は「市民が心の中で感じていた沼への思いを、日本遺産として認定していただき、誇りに思う。館林の『シビックプライド』がさらに高まるのではないか」と喜んだ。

 高崎経済大地域科学研究所長の西野寿章教授は「県央にはない魅力がある。沼が役立ったことや開発に適さず悩んだことを含め、歴史、文化、風土を地域外の人に理解してもらえるよう、どう表現していくかが大事」と今後の課題を指摘している。

 日本遺産 地域の文化財の魅力を高め、観光資源として積極的に活用する目的で、文化庁が2015年度に認定を始めた。寺社や城郭、祭り、伝統芸能など複数の有形・無形の文化財を、一つのテーマに沿ってまとめて認定する。審査では、テーマの面白さや独自性、外国人にも分かりやすい物語性があるかが重視される。東京五輪・パラリンピックが開催される20年度までに 100件程度に増やす方針。