猛獣の迫力、間近に 茨城・日立のかみね動物園、新舎オープン
■名称「がおーこく」
茨城県日立市宮田町の市かみね動物園で整備が進められていた新猛獣舎がオープンした。獣舎の名称は「がおーこく」に決定。ライオンとトラに加え、新たにジャガーが仲間入りした。生息地に近い環境を再現し、広さも旧舎の約5倍に拡大。来園者は、猛獣が肉を食べる様子などを間近で見て歓声を上げた。
旧猛獣舎はコンクリートで囲まれ、風通しや日当たりが悪く、観察場所も限られていた。完成から50年以上経過して老朽化も進んでいたことから一新した。名称は、猛獣の鳴き声がこだまする王国をイメージして付けた。
新猛獣舎は地上1階、地下1階建てで床面積は690平方メートル。種類ごとに3区画に分かれ、放飼場も780平方メートルと広くなった。整備費は約10億円。サバンナや熱帯雨林を意識した造りで、多角的に観察できるようになった。
同日は約300人の行列ができた。多くの親子連れが詰めかけ、ガラスのすぐ向こう側で牛肉を豪快に頬張るライオンや、新しい環境に緊張してお尻を向けたままのジャガーなどを観察して楽しんだ。
ジャガーは一時海外からの導入も検討したが、国内の動物園に協力を依頼。繁殖に成功した静岡市と神戸市の動物園から、雌の「小麦」と、全身が黒い雄の「アステカ」を迎え入れた。これで三大陸の大型ネコ科動物を見比べることができる。
日立市立大久保小5年の加納咲季さん(10)と、同水木小2年の新井凜さん(8)の2人はライオンを撮影する際、ガラス窓への「ネコパンチ」を目撃。「近くで見られて感動した」「きれいになってすてきだった」と話した。
一般開放に先立ち関係者が出席して記念式典を開催。小川春樹市長は「広く愛される動物園にするため引き続き努力する」と述べた。旧猛獣舎跡地は今後、展望広場として再整備する。
■第2次再整備完了 進む「再生」、入園者回復
日立市かみね動物園は2007年の開園50周年を機に始まったリニューアル事業で、大きく変化を遂げた。この間、10以上の獣舎が生まれ変わり、動物福祉の観点から飼育環境の改善も進んだ。本年度で第2次再整備計画は完了。園の「再生」に合わせ、入園者数も回復基調だ。
同園の入園者数はバブル崩壊後に減少に転じ、00年代には最盛期に比べ20万人ほど少ない年間26万人まで落ち込んだ。一時は身売り話も浮上する中、市は50周年を機に大幅な改革に着手した。
08年のチンパンジーの森を皮切りに、サルの楽園やクマのすみか、キリン舎、カピバラ舎などを17年までに順次再整備。野生に近い環境を整え、動物本来の行動を引き出すことも追求してきた。
開園60周年記念事業として18年には「はちゅウるい館」を新設。その後も再整備計画に基づき、20年にニホンザル舎、21年にレッサーパンダ舎が完成し、新猛獣舎を含めたこれら4施設の事業費は計約17億円に上る。
飼育の面でも、20年には麻酔を使わずにシマウマの採血に国内で初めて成功、動物福祉に配慮した試みが進む。こうした取り組みで来園者数は年間35万人ほどまで回復した。
今年で開園65年を迎え、現在は3次計画の策定作業が進む。生江信孝園長は「今後は、絶滅の危機にある野生動物の保全教育につながる獣舎づくりにも力を入れたい」と話す。