書店巡り収集 御書印 じわり人気 客足回復に期待
電子書籍やインターネット通販の広がりで中小の書店が苦境にあえぐ中、店舗の外観などをかたどったはんこに各店独自のメッセージを添えた「御書印」の収集が、本好きの間でじわじわと人気を広げている。参加店は全国に拡大しつつあり、県内の参加店主らは「街の本屋の新たな魅力として定着してくれれば」と客足回復に向けて期待を寄せている。
御書印は3月、小学館パブリッシング・サービス(東京)の小川宗也さん(49)の発案で生まれた。書店を巡り、「御書印帖」にはんこを押してもらう。
書店によっては店員に話し掛けにくい雰囲気もあるとして「このままだと店に足を運んでくれる人がますます減ってしまう」と危機感を抱いたのがきっかけだった。友人の一人が趣味にしている御朱印集めがヒントになったという。
実際に、書店を取り巻く環境は深刻だ。全国の新刊書店でつくる日本書店商業組合連合会(東京)によると、2000年に9千店以上あった加盟店は、10年間で5千店台に減り、今年4月には3千店を切った。さらに今年は新型コロナウイルスの影響で多くの書店が休業や営業時間の短縮を余儀なくされ、新刊の販売延期や中止も相次いだ。
御書印プロジェクトも一時暗礁に乗り上げたが、感染拡大のペースが鈍化して人の移動が活発化したことで、参加店は42都道府県の200店超まで拡大。最近は本好きの間で話題に上がる機会も多い。県内はフリッツ・アートセンター(前橋市)、ふやふや堂(桐生市)、近江屋書店(同)の計3店が参加している。
店側も手応えを感じ始めている。前橋市の敷島公園近くで絵本を中心に取り扱うフリッツ・アートセンター。代表の小見純一さん(62)は「こんなに反応があるとは思わなかった」と驚く。10月に開始して以降、御書印集めを目的に県内外から老若男女が訪れているという。
コロナ禍で読書の価値が見直されたり、個性的な書店巡りを旅の目的として楽しむ人が増えていることも背景にあるとみる。小見さんは「ネットでは得られない本屋や店員との偶然の出会いが魅力。参加店が増え、より認知度が高まれば良い」と期待する。
近江屋書店の岸田啓作社長(48)は、本好きが街に足を運んでくれる点に大きな意味があると指摘する。「地域の歴史や地元ゆかりの作家を紹介して、周辺を歩いてもらえば、街を好きになるきっかけになるかもしれない」
御書印帖は無料で配布しているが、無料分がなくなると有料になる。参加書店で200円程度を払えば御書印を押してもらえる。