画家・小川芋銭と土浦のつながり知る機会 市立博物館がびょうぶや扁額初公開 旧土浦病院所有

茨城新聞
2020年9月21日

土浦市の旧土浦病院が所有していた日本画家・小川芋銭作のびょうぶや扁額(へんがく)が、同市中央の市立博物館で展示されている。中国唐代の僧侶「寒山拾得(かんざんじっとく)」を描いたびょうぶや粟野春慶塗の盆に「初夢」を題材に描いた作品や手紙などほとんどが初公開。病院内に長年飾られてきた作品もあり、同館は「芋銭と土浦のつながりを知ることができる貴重な機会」と話している。

土浦病院は1914(大正3)年、県内初の女医、石島ゑいが土浦に開業。2018年に閉院するまで3代、104年にわたって地域の医療を担った。ゑいと夫、績(いさお)が、牛久に工房を構えていた芋銭と最晩年まで親交を持った。

展示は「土浦病院と小川芋銭」と題して開かれ、同院の石島家が市立博物館に昨年寄贈した作品や書物、写真を含め約30点が一堂に会した。ほぼ未公開の作品群とみられる。

芋銭は1922年、同院の看板と言える扁額「土浦病院」を制作。俳句や和歌をたしなんだ績に対し雅号を「旦々庵」と自ら名付け、扁額「旦々庵」や肖像画も描いた。絵には漢文で「名医ではないが真面目にコツコツと仕事をする」と言葉が添えられた。これらの作品は院内や自宅に長らく飾られてきた。寒山拾得を描いたびょうぶは芋銭らしい水墨の軽妙な筆致が見られる。

芋銭を撮影した記録写真には工房でナスを描く姿が含まれ、よく知られている。そこで描いていたとみられる粟野春慶塗の盆(3点一組)が今回公開された。芋銭が圷村(現城里町)の春慶塗の職人を訪ね、漆塗りを依頼したという。初夢の「一富士二鷹(たか)三茄子(なすび)」を1点ずつ描いた。

芋銭から績宛てに送られた手紙や中国故事の掛け物も複数が残されている。

同博物館の野田礼子学芸員は「寄贈作品の中には印象に残る発見があった。身近にあった芋銭の作品や、芋銭を囲む人々のエピソードに触れて、楽しんでもらえれば」と話している。展示は10月11日まで。

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