《旬もの》そめや農園(大子町) ナツハゼ栽培、第二の人生

茨城新聞
2019年10月20日

大子町のそめや農園では黒紫色に熟したナツハゼが収穫期を迎えている。園主の蛭川克則さん(65)は収穫した実を外部に委託してジャムなどに加工している。ブルーベリーよりも小さなナツハゼの実に魅せられ、充実した第二の人生を過ごす。

蛭川さんによれば、夏に紅葉することからナツハゼというのだそうだ。あまりなじみがないが、「ブルーベリーと同じツツジ科。ブルーベリーの原種といわれており、“和製ブルーベリー”といったところ。この辺りでは、実に鉢巻きのような筋があるので、鉢巻きブドウと呼ばれている。昔は、熟した実が山で遊ぶ子どもたちのおやつだった」と話す。

地元のJAに勤務していた蛭川さんは57歳で役職定年を迎えた。JAの枝物部会の生産者に誘われ、定年後を見据えて55歳ごろから、7年かけて、所有する山や知り合いの山に自生するナツハゼの木を畑に植えた。当初は生け花などに使われる枝物として市場出荷を目指したが、実を利用できないかと考えるようになった。近県の道の駅などで実の加工品を目にしたのも刺激となった。

約30アールの畑に約3000本が植えられている。「過保護に肥料をやったら病気になってしまった」と失敗もあった。「山の物は肥料をやらず、農薬を使わず、自然のまま育てるのがいい。除草剤もまかないため、草刈りに忙しい」。5月に白い釣り鐘型の花を咲かせ、10月半ばごろから11月までが収穫期。木には小豆大ほどの実がたくさん付いていた。一粒ずつ手で収穫する。

ブルーベリーより野趣あふれる味わいの実は販売せず、ジャムなどに加工。大子町や常陸大宮市にある道の駅の農産物直売所などに出す。

約3年前から加工を始めた。群馬県の農産加工所に製造を委託する「なつはぜコンフィチュール」は丸ごとの実がごろごろ入るジャム。材料は実と砂糖だけで作ってほしいと頼んでいる。甘酸っぱく、ヨーグルトやホットケーキによく合う。あめ、果汁も商品化した。現在、実を乾燥させた茶を試作中だ。「いろいろ加工できる」とナツハゼに可能性を感じている。

「まだまだ知名度がなくて」と言いながらも、蛭川さんは「ナツハゼが生きがい」と笑顔を見せた。

■メモ
そめや農園
▽大子町山田1379
▽(電)080(9507)8124

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