国文化財に「帆引網漁」 保存会、継承に期待

茨城新聞
2018年1月20日

国の文化審議会(馬渕明子会長)は19日、土浦、かすみがうら、行方3市に伝わる「霞ケ浦の帆引網漁の技術」を、記録作成などの措置を講ずべき無形の民俗文化財とするよう、文化庁長官に答申した。本県の同文化財は、2015年に選択された県南地域と千葉県に伝わる「東関東の盆綱」以来で20件目。

霞ケ浦の帆引き網漁は、大きな一枚帆で風を受け、風力を利用して船体を横滑りさせながら、袋状の綱を引いて漁獲する技術。明治初期に考案され、近代漁法以前の形態をとどめる希少な漁法の一つとされる。

特に、波が穏やかで風通しもよく広大な霞ケ浦ならではの自然環境から育まれた漁法で、国の内水面の漁労技術を理解する上で貴重とされる。シラウオやワカサギを漁獲対象とし、1880年に地元の折本良平が考案したとされる。

帆引き網漁は、1960年代以降、動力船のトロール漁が取って代わる形で衰退したが、1971年、霞ケ浦漁業の重要な文化遺産として観光船の形で復活。3市の保存会が現在、計8艘(そう)の維持管理と操業を行い、後継者を育てて保存活動に努めている。白い帆を上げて進む優美な姿は多くの観光客を引き付けている。

答申を受けたことに対し、土浦帆曳船(ほびきせん)保存会長の古仁所(こにしょ)登さん(76)は「全国の注目が集まるので、保存活動には弾みになる」と喜んだ。霞ケ浦帆引き船・帆引き網漁法保存会長の戸田広さん(83)も「漁としての復活もできないか検討したい」。行方市帆引き船保存会長の鈴木周也市長は「霞ケ浦の伝統漁法を『誇り』として、将来にわたり継承してもらえれば」と期待を込めた。

各市では木造船の建造工程や船の操船技術などの設計図を作成し、映像に記録する活動も実施。資料としても残す考えだ。 

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