水源県ぐんま 地域資源保全と活用を
ㅤ山々から湧き出る幾筋もの清流が、やがて関東平野を潤す大河となっていく。首都圏の水がめとしての役割を担う本県。14日にはユネスコㅤエコパークに利根川源流を含む「みなかみ」の登録も決まった。水源県ぐんまの存在をあらためて内外に発信する好機だ。水という生活に欠かせない地域資源保全の重要性を訴えるとともに、豊かな水辺環境の活用についても考えていきたい。
ㅤ水の需要期である夏場を前に、この時季注目されるのが渇水への対策。昨年は山間部の降雪量が少なく、利根川や渡良瀬川で取水制限が行われた。一方で今年は十分な貯水量が確保されており「今後の降水量にもよるが、現状では心配する状況ではない」(国土交通省関東地方整備局河川部河川環境課)という。
ㅤただ、水問題は危機的状況となる時にだけ議論をすればいいというものではないだろう。県内でも意識の高まりから水源となる森を守ろうという民間の動きが見られる。林業の低迷から山を整備する人材が減少、豊かな水源地の環境も変化した。企業、NPOなどの民間と行政が協力して森林の整備にこれまで以上に力を入れていくことが求められている。
ㅤ貴重な地域資源は観光面での活用も期待される。7~9月の「ググっとぐんま観光キャンペーン」は、観光資源としての「水」をテーマに掲げる。迫力ある水流が涼を呼ぶ吹割の滝(沼田市)や、酸性の水が鮮やかな緑を生み出すチャツボミゴケ公園(中之条町)は多くの観光客を集める。
ㅤ近年はラフティングやキャニオニング、カヌーなど体験型イベントがすっかり定着した。迫力ある景観を生み出すダムとともに、愛好家の集うスポットとして知名度が上がっており、誘客の大きな武器となっている。
ㅤ県内には「雄川堰」(甘楽町)、「箱島湧水」(東吾妻町)、「尾瀬の郷片品湧水群」(片品村)、「神流川源流」(上野村)といった名水百選に選ばれているスポットもある。県外からUターンした県民があらためて実感するのが群馬の水のおいしさではないだろうか。群馬に来て飲む水自体が、大きな観光資源になり得ると言える。
ㅤ一方、利水に加え、治水の大切さも考えなければならない。今年は大きな被害が発生したカスリーン台風の襲来から70年。災害の記憶を語り継ぎ、時に脅威となる川の状況を注視していくことが必要だ。恩恵をもたらす半面、自然は恐ろしく、非情な面があるという点も肝に銘じておかなければならない。
ㅤ日々当たり前のように使っている水の大切さをあらためて考えたい。生活用水を供給する地域で暮らしていることを自覚し、県民一人一人が水源を守ることについて関心を寄せるべきだろう。今後も変わらず豊かな水資源を享受し続けるために。
2017・6・15 《論説》
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