《食いこ》山王珈琲焙煎所(茨城・取手市)

茨城新聞
2024年9月6日

■酸味少なくフルーティー

2023年7月にオープンした茨城県取手市山王のコーヒー豆専門店「山王山王珈琲焙煎所」。店舗前駐車スペースの傍らには豆をデザインした看板。南米、アフリカ産の選び抜いたフェアトレードの豆を丁寧に自家焙煎(ばいせん)し、店舗とネットで販売している。

だが、ふと目を転じれば、焙煎所の看板より高く「椎名米菓」の看板。店内にはコーヒー豆と各種せんべいのショーケースが隣り合う。〝異種格闘技戦〟の様相を呈する不思議な店が成立しえた訳は。

焙煎所代表の椎名浩子さん(59)が1935年創業の老舗せんべい店に嫁いだのは24歳の時。以来夫と共に、社長である義父を手伝って店を切り回してきた。

コーヒー好きの椎名さん、知人に勧められ、軽い気持ちで焙煎と入れ方の講習会に参加した。そのおいしさに感動し、「コーヒーならできないこともないか」と帰り道には本格的勉強を決意していた。

そこからが早かった。東京都内の教室に通い詰め、設備を整え、経験と工夫を重ねて独自のノウハウを確立。3年目に開店にこぎ着けた。

道路沿いに面した、木目調のおしゃれな店舗

山王コーヒーの特徴は、30グラムの豆から最初の120~140ミリリットルを抽出して「原液」とし、それを2.5倍に希釈して飲むのが標準。もちろん濃さは好み次第。おいしい入れ方は公式サイトに詳しい。

酸味少なく、こくがあり、フルーティーな香りとクリアな味わいで「雑味がないのが売りです」と椎名さん。オリジナルの「山王ブレンド」はソースせんべい、ニンニク味せんべいと並ぶ一番人気だ。

来店者には必ずカップになみなみと注いで試飲を勧めるのも自信の表れだ。えぐみや油脂成分の引っかかりがないので「冷めても変わらぬおいしさ」を請け負う。

目指してきたのは「来店したお客さんに感動して帰ってもらいたい」こと。固定客を大事にし、伝統の味・せんべいと、自家焙煎コーヒー豆を一緒に販売することで、双方の客がつながり、ファンを広げている。

旺盛な探究心と実行力でコーヒーチョコ、焙煎ナッツ類など派生商品も生み出してきた椎名さん。「失敗もあったが、アイデアを思い付いて形にする過程が楽しいんです」と笑顔で挑戦が続く。

■お出かけ情報
山王珈琲焙煎所
▽茨城県取手市山王87の1
▽営業時間は午前10時~午後5時(不定休)
▽(電)0297(85)8582
▽メールアドレス support@sanno-coffee.jp
ホームページ https://www.sanno-coffee.jp/

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