《釣り》ヤマメ20センチ 価値ある1匹 葉の陰から襲いかかる 栃木で渓流釣り解禁

茨城新聞
2024年3月30日

3月1日、栃木県の渓流釣りが解禁となった。待ちに待った解禁だったが、都合がつかなかったり天気が悪かったりで2週間が過ぎた3月中旬、やっと栃木県の余笹(よささ)川、武茂(むも)川へ釣りに行くことができた。

同県那須町の余笹川上流域は一面雪景色。用心してトレイルラン用のラジアル底の靴を履く。しばらく川の様子をうかがいながら上流へ向かって歩くが、魚の気配は感じ取れない。

3月の渓流釣りは困難を極める。茨城県の解禁は4月1日だが、この頃になると水温も上がり、ヤマメも動くので釣りやすい。が、那須の3月はまだまだ冬。この日の餌は那珂川で取ってきたクロカワムシとキンパクと呼ばれる川虫だ。

この日用意したさお、目印、針、糸など

 

深い流れを見つけては、ゆっくりと餌を見せつけるように何度も仕掛けを流し入れるが、まるで生命感がない。数カ所目でやっとアタリが出たが、15センチに満たないヤマメだった。

水温3度。気温が上がりユスリカが羽化するタイミングを狙うしかない。しかし8時過ぎくらいから冷たい風が吹き始め、羽化はないと判断し移動を決める。

成魚放流した川に行って放流魚を釣るか-とも思ったが、いやいや、釣れなくてもいいから野生魚を探そうと考え直し、大田原市の武茂川へ車を走らせる。

途中の余笹川下流で餌の小さいオニチョロ虫とクロカワムシを取り、昼ごろから武茂川で釣り始める。上流へ歩きながらめぼしいポイントをつぶしていくが、やはり釣れない。繰り返すが3月の渓流は難しい。

本来ならウグイが釣れることでヤマメの居場所のヒントとなる。だが近頃は野鳥に食われてウグイもほとんどいなくなった。

じりじりとした時間だけが過ぎ、日も陰ってきた時間帯、岩壁にシュンランが群生しているポイントに出くわした。水際の岩にももっさり根付いていて、垂れた葉の陰に一瞬、魚が見えたような気がした。

半信半疑で針に小さなオニチョロを掛けて流すと、ギラッと反転して飛びついてきた。ヤマメだ! しかしアタリはなく仕掛けがジワーっと流れ漂うのみ。どこへ行った?

重りを底に付けて流れるのを遅くしてみると、再び葉の陰からまるで矢のように襲いかかってきた瞬間、目印が引き込まれた。アワセを入れなくても針が掛かっている感じだ。

川面に張り出した木の枝に糸が掛からないよう慎重に魚を寄せてタモ網に入れた。美しい。この魚に「山女魚(やまめ)」と名付けた人の気持ちが分かる。サイズは20センチ超。自慢できる大きさではないが、この1匹の価値はとても大きい。(奔流倶楽部渓夢・上谷泰久)

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