ケーブル敷設計画 尾瀬で携帯電話 山小屋限定、来秋にも

上毛新聞
2017年2月27日

携帯電話の電波がほとんど届かない尾瀬国立公園の山小屋で、早ければ来秋にも携帯電話が使えるようになる見通しであることが24日、明らかになった。携帯電話大手のKDDI(東京)が既存の電線に沿って通話などのための光ケーブル敷設を計画するのに対し、環境省は植生や景観への影響はないとして「許可基準に適合する」と前向きだ。3月8日の尾瀬国立公園協議会で承認を得られれば、同省と同社は敷設に向けた手続きを進める見通し。
同省が24日、さいたま市内で開いた「尾瀬国立公園適正利用の推進に関する小委員会」で同社の計画を報告したところ、委員から異論が出なかった。尾瀬は現在、通話できるのは入山口周辺などに限られる。
計画は特別保護地区内の山ノ鼻(片品村)と尾瀬沼周辺(福島県檜枝岐村)に光ケーブルをつなぎ、ビジターセンター2カ所と山小屋計6軒に接続。通話のほか、公衆無線LANサービスのWi―Fi(ワイファイ)やインターネットなどを使えるようにしたい考え。鉄塔などを使った送電線に沿って直径数センチのケーブルを設置する。
同社は、光ケーブルが敷設できない山小屋については、屋根などに設ける衛星アンテナを経由して屋内で通話ができるようにすることも検討している。
計画について環境省は、植生や景観への悪影響がないことに加え、①入山者の利便性向上②外国人を含め入山者への情報提供の幅が広がる③山小屋関係者らとの情報共有がしやすくなる―との利点を見込む。ただ、屋外での使用に関しては、歩きながらの使用が危険な上、静かな尾瀬の環境保全の妨げになるとして引き続き慎重な姿勢だ。
環境省関東地方環境事務所は「国立公園で外国人利用者が増える中、全国のビジターセンターでWi―Fi整備を積極的に行っている」とし、計画は自然公園法の許可基準に適合するとの見方を示した。
取材に対し、KDDIは、尾瀬での通話や会員制交流サイト(SNS)を使えるようにしてほしいとの要望が利用者から寄せられていると説明。「環境への配慮が必要なので環境省と相談している」とした。今後、ケーブル設置に向けて申請手続きを進めるとみられる。
事故時の連絡手段として携帯電話の使用拡大を求めている尾瀬山小屋組合の関根進組合長は「入山者の安全性や利便性が高まり、若者の入山増の後押しにもなる」と歓迎している。

 

【写真】ミズバショウが咲く尾瀬国立公園。山小屋で携帯電話を利用できるようになれば利便性は高まる=2016年5月

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