《釣り》北茨城 サーフでヒラメ狙い 日の出の瞬間、良型ゲット

茨城新聞
2023年11月3日

秋はサーフでヒラメ釣りの季節だ。しかし今年は海水温が高く、なかなかシーズンインしない。それでも海岸の様子を見に北茨城の砂浜に連日通ってみた。

10月中旬、日の出の2時間前から暗闇の波打ち際で小魚を模したプラグを投げ始めた。見上げる夜空は大パノラマで迫力がある。

流星群が近づいているわけでもないのに星が次々に降ってくるさまを楽しむのは、とてもぜいたくな時間だ。昨日、この場所で大きなシーバスに逃げられている。しかも糸を切られたのでルアーも持っていかれてしまった。

今日は波がより静かで、暗闇でもうっすらと感じ取れるサラシの広がりが小さいようだ。日の出が近づくにつれ、周囲が明るくなってくる。海の色は昨日までの濁りが取れて黒っぽい透明な水色。黒っぽく見えるときは小魚が寄って来る場合が多い。

ヒラメを上げたちょうどその時、太陽が顔を出した=北茨城市

 

ヒラメを狙って来てはいるのだが、ここ数日の傾向からヒラメがかかる可能性は低いと判断。シーバス狙いに方針転換して、餌場であるシャローの泡へプラグを投げ続けた。

波打ち際をずんずん歩いて、大きくサラシが広がっている場所を見つけてはプラグを通してみる。なかなかアタリはないが、たまに尾ではじかれたような感触が伝わってくる。

「粘れば来る!」と念じつつ、ルアーはプラグ一択で歩き続ける。満潮の時間が迫る。彼方の水平線がオレンジ色に染まり始める。あと数分で日の出だ。水かさが増えてサラシが消えた。強まる横流れで狙いが絞りにくい-と、その時ヒット!

「よしきた、今日は逃がさないぞ!」。獲物は横流れに乗ってぐんぐん私の方に近づいてくる。どんどん糸を巻き取る。さおを曲げてぐいぐい引っ張る。大きさは分からない。ジャンプさせようとすると、ラインが沖にずいずい向かう。

まあまあのサイズだ。どうやらシーバスではないようだ。やがて波間から見えてきたのはヒラメ-。慎重に砂浜にズリ上げると「ビタン、ビタン!」と肉厚の魚体が跳ねる。良型だ。

まさに「縁があれば糸もつなぐ」とはこのこと。大きなヒラメがはじいた水しぶきが、まぶしく輝く。ちょうど太陽が水平線から顔を出した瞬間だった。

「〽今はもう秋/誰もいない海」-、そんな歌もあったな。しかしここ北茨城、秋の海の朝は星降る夜空と彼方に昇る太陽、そして意想外の獲物との出合いがある。ほんのちょっとの時間でこんなにも豊かな体験ができるのは、たぶんここだけだ。(奔流倶楽部渓夢・上谷泰久)