涸沼の魅力発信拠点、2024年完成 茨城 展示、観察の2施設

茨城新聞
2023年9月25日

ラムサール条約に登録されている涸沼の保全や野鳥の観察を行う「水鳥・湿地センター」の整備が、茨城県の茨城町と鉾田市の沿岸2カ所で進む。国際的に重要な湿地を守る同条約の登録により、環境省が整備する拠点は関東で初めて。ともに2024年完成の見込みで、地域では涸沼の魅力の発信拠点として期待を寄せる。

環境省が涸沼沿岸の茨城町下石崎、鉾田市箕輪の2カ所に整備している。展示施設を北岸の茨城町に、観察施設を南岸の鉾田市に配置する。

茨城町の展示施設は木造平屋建て、延べ床面積404平方メートル。涸沼に生息する動植物をパネルや水槽で紹介する展示室、学習などができるレクチャールーム、ライブラリーを備える。

鉾田市の観察施設は木造3階建て、延べ床面積330平方メートルで、2階と屋上が展望スペースとなる。敷地内に市が公園を整備。昆虫や野鳥の繁殖場所となる湿地やビオトープ、遊具を備えた広場を設ける。

観察施設のイメージ

涸沼は鉾田、茨城、大洗の3市町にまたがり、海水と淡水が混じる関東唯一の汽水湖。スズガモやオオセッカなどの鳥類をはじめ、ヒヌマイトトンボに代表される昆虫類や魚類、植物など多種多様な動植物が生息する。絶滅の恐れがある種を支える湿地など、三つの国際基準を満たし、15年5月にラムサール条約に登録された。

条約に登録された湿地は国内に53カ所。県内では涸沼のほか、群馬と栃木、埼玉の4県にまたがる渡良瀬遊水地が含まれる。

条約では、湿地の「保全・再生」と「ワイズユース(賢明な利用)」とともに「交流、学習」を目指している。同省は三つの目標を担う施設として、特に水鳥が渡来する登録湿地に水鳥・湿地センターを整備している。

施設の誘致は、登録翌年の16年に県と沿岸3市町などでつくる「ラムサール条約登録湿地ひぬまの会」を中心に進めてきた。環境省は自治体や市民団体などへのヒアリングを行い、19年に整備に着手した。

地域では、センター設置が涸沼の保全や魅力発信につながると期待する。ひぬまの会が認定する涸沼ラムサールネイチャーガイドの星川理恵子さん(52)は「これまで活動の拠点がなかったが、汽水湖の豊かな自然を間近で伝えることができる」と強調する。

両市町は地域振興にも期待する。茨城町は「にぎわいの創出、涸沼を含めた地域の文化の啓発につなげたい」、鉾田市は「沿岸3市町で連携した企画に取り組み、近くの大洗鹿島線や宿泊施設の利用者拡大などにつながってほしい」としている。