昭和歌謡作詞家・矢野さんの顕彰碑完成 「夕焼けとんび」「おーい中村君」 茨城・筑西
昭和歌謡の名曲「夕焼けとんび」「リンゴ村から」などを手がけた茨城県筑西市(旧下館町)出身の作詞家、矢野亮さん(本名三上好雄、1910~86年)の功績をたたえる顕彰碑が同市甲の公園に完成した。地元の顕彰会が建立した石碑で、矢野さんの肖像や夕焼けとんびの歌詞、ヒット曲名などが刻まれている。6月24日に除幕式があり、出席者は昭和歌謡をけん引した作詞家に思いをはせた。
顕彰碑は高さ約2メートル50センチ。「矢野亮先生顕彰会」(赤荻利夫代表)が同市甲の羽黒児童遊園に建立した。夕焼けとんびの歌詞として「夕焼け空がマッカッカ とんびがくるりと輪を描いた ホーイのホイ」と記したほか、矢野さんのヒット曲「おーい中村君」や「唐獅子牡丹」「星影の小径」などを紹介。矢野さんの生家から見えたとされる筑波山もあしらった。事業費は約230万円で、市合併振興基金を活用した。
顕彰会によると、矢野さんは開業医の三上文七、はつ夫妻の三男として下館町甲に生まれた。下館小から旧制下妻中3年生の前期まで在籍したが、文七が関東大震災の被災者救護で上京したのを機に家族で都内へ転居した。
明治大を卒業後、講談社に入社し、同社傘下のキングレコードのディレクターから作詞家となった。生涯に千曲以上を作詞し、900曲以上がレコード化されたという。勲四等瑞宝章を受章した。
顕彰会は2018年設立で、市民から矢野さんの顕彰を求めるはがきが市役所に寄せられたのがきっかけだった。当時、税務部長を務めていた大和田浩さん(65)が石井正副市長とともに矢野さんの長男、三上路生さん(75)、朋子さん(69)夫妻を訪ねたところ、矢野さんの楽譜や写真など貴重な資料を預かったため、地元有志で顕彰会を立ち上げることになったという。
除幕式には碑文を書いた須藤茂市長、矢野さんの子ども3人や親族など約35人が出席した。あいさつした路生さんは「夕焼けとんびは下館の原風景が描かれている歌詞だと思う。下館での生活は、筑波山を望む豊かな自然と心優しい人々にも恵まれた幸せな時だったと聞いている」と語り、顕彰碑の建立に感謝した。
赤荻代表は顕彰碑について「矢野先生を生んだ筑西市に愛着と誇りを持っていただき、先生の歌を口ずさんでいただければ幸い」と述べた。顕彰会は今後、地元の観光ボランティアの案内ルートに顕彰碑を加えてもらい、周知を図っていく予定だ。