茨城・笠間焼250年の変遷  協組が記念冊子 豊富な写真、代表作家紹介

茨城新聞
2023年5月18日

茨城県の笠間焼が誕生して250年になるのを記念して、笠間焼協同組合は、草創期から現代に至る変遷を記した冊子「笠間焼 250年のあゆみ」を刊行した。江戸中期に焼き物生産を通じて地域の産業発展に尽くした窯元や陶工、戦後の衰退期を乗り越えた官民一体の取り組み、独自の陶芸表現を展開する現代作家などを詳しく紹介した。ほかに笠間焼海外販路開拓事業など近年の動きや、携わる人々の息吹を伝えている。

冊子は県立歴史館特別展「笠間焼 200年のあゆみ」(1997年開催)の展示解説書をベースに、生産の仕組み、土づくりから形成・焼成に至る制作技法や用具の変遷、商品流通の在り方などを柱に構成している。

特徴の一つが豊富な写真資料。県陶芸美術館や県立笠間陶芸大学校の協力を得て、笠間焼の元祖とも言える江戸・明治期に製造されたかめや、すり鉢など生活雑器の写真を掲載している。奇をてらわない素朴な造形だったり、大胆な釉薬(ゆうやく)がけがなされ、焼き物が暮らしに根付いていた往時をしのぶことができる。

現在の笠間焼を代表する作家145人の作品写真も紹介している。「伝統」「創作」「クラフト」「前衛」といった日本工芸の大勢に呼応するような、型にはまらない多彩な陶芸表現を一覧することができる。

このほか、産業としての笠間焼に関する近年の動きも記載。英国を拠点とした海外販路開拓事業や、同市内で採掘される稲田石の微粉末を釉薬原料に活用する試みなど、未来に向けて持続・発展させようとする人々の知恵や情熱を伝えている。

同組合の大津廣司理事長(75)は「250年という歴史は先人たちのご努力のたまもの。多くの功績に感謝と敬意を表したい。本書の出版は、50年先、100年先の笠間焼の方向性を考える機会にもなった。多くの方に手に取ってもらえれば」と話した。

「笠間焼 250年のあゆみ」は笠間市内の図書館など公共施設に配布。問い合わせは、同組合(電)0296(73)0058。