古代の湖 「鳥羽の淡海」思い乾杯 茨城・筑西 跡地栽培の米で日本酒

茨城新聞
2023年5月10日

常陸国風土記に記され、現在の茨城県筑西、下妻の両市に広がっていた「鳥羽(とば)の淡海(おうみ)」にちなんだ日本酒が完成した。来福酒造(筑西市村田)と筑西市観光振興推進協議会が共同開発した。かつて湖があった場所で栽培した酒米を使い、ラベルには同地で出土した化石にちなんでクジラのイラストが描かれている。

筑西市観光振興課によると、常陸国風土記には現在の同市明野、関城両地区から下妻市北東部にかけて広大な大湿地帯が広がっていたことが記されている。万葉歌人の高橋虫麻呂(むしまろ)も「新治の鳥羽の淡海も 秋風に 白浪立ちぬ」と詠んだ。

当時の鬼怒川は下妻市長塚あたりから東に流れを変え、小貝川に合流。大量の土砂を運び込み、小貝川をせき止めて湖が形成されたとみられる。その後、鬼怒川の流路が現在のような姿に変化したことに伴い、干上がったという。

開発された特別純米酒「鳥羽の淡海」は、筑西市稲荷で栽培した酒造好適米「美山錦(みやまにしき)」を使用している。来福酒造の藤村俊文社長は「飲み口はきれいで雑味が少ないが、米のうまみもある」と評する。

出土したクジラの化石は脊髄の部分で、筑西市文化財に指定されている。産業技術総合研究所(産総研)発ベンチャーの「地球科学可視化技術研究所」(つくば市)の芝原暁彦所長に分析を依頼。「マッコウクジラ系ではないか」との助言を踏まえ、イラストレーターのツク之助氏がラベルのイラストを描いた。紫色に染まったクジラの口は「紫峰」と呼ばれる筑波山をイメージした。

720ミリリットルで1540円。同市川澄の道の駅「グランテラス筑西」で先行販売が始まっており、5月中旬には市内酒販店などで取り扱いを始める予定。

問い合わせは来福酒造(電)0296(52)2448。