茨城・高萩の県重文「穂積家住宅」 輝き放つ金色の屋根 20年ぶり葺き替え
築250年を迎える茨城県高萩市上手網の県指定有形文化財「穂積家住宅」の屋根葺(ぶ)き替え作業が終わり、2022年6月以来の一般公開が再開した。修復は茅(かや)が劣化したためで、約20年ぶり。美しく生まれ変わった金色の屋根が輝きを放っている。茅は今後3~4年で焦げ茶色に変色するため、市は「修復直後の貴重な状態。早めに見に来てほしい」と呼びかけている。
穂積家住宅は、江戸時代中期の1773年に建造された豪農の住宅。1989年に県から有形文化財の指定を受けた。99年の改修工事の際に墨書が見つかり、建造時期が判明した。主屋の延べ床面積は317平方メートル。屋根は茅葺きで、雨風で傷みやすい軒先を保護するための軒付けは、5段重ねで厳重に葺かれている。同住宅管理人の坂本実さん(83)は「ここまで古く、立派な農家の家は少ないのでは」と話す。
今回の修復作業は、昨夏に始まり、栃木県の専門業者が長さや強度が違った茅を組み合わせる伝統技術を使って、今年3月に完成させた。合わせて、正面入り口にある豪華な市松模様の軒付けも当時の趣を再現した。葺き替えた屋根は、天候などにも左右されるが30年ほど持つと見込んでいる。
穂積家は農業にとどまらず酒造業や林業、金融業、製糸業など幅広い分野で地域経済を支えた。財政危機に陥った水戸藩に多額の寄付を行い、農民ながら武士と同じ待遇を得る「郷士」に上り詰めた。豪勢な建物と造りは「郷士制度」を伝える歴史的価値もあり、テレビや映画のロケ地としても活用されている。
敷地内には、市の史跡に指定されている約100坪(330平方メートル)の日本庭園があり、風情を漂わせている。庭園には、ヤマザクラやツツジが植えられており、来場者の目を楽しませている。
市生涯学習課は「桜や紅葉祭りといった季節のイベントに合わせて見に来てほしい」と話す。多くの人に訪れてもらうための企画も模索中だ。同住宅は高萩インターチェンジから車で1分。開館時間は午前9時~午後4時。月曜休館。