遺跡の貝使った焼き物人気 「捨てるにはしのびない」 茨城・美浦

茨城新聞
2023年3月14日

茨城県美浦村の貝塚から発掘された貝を釉薬(ゆうやく)に練り込んだ焼き物が人気を集めている。同村には国史跡「陸平(おかだいら)貝塚」をはじめ、大小の貝塚が8カ所ある。調査を終えた貝は膨大な量に上り、村では保管に困っていた。住民らと使い道を検討し、笠間焼関係者の協力を得て製品化した。村は「捨てるにはしのびなかった。焼き物を通じて村に興味を持ってもらえれば」と期待する。

村によると、陸平貝塚を含む一帯は約7千~3500年前の縄文時代の遺跡で、当時の霞ケ浦に浮かぶ島に生活拠点が形成された。貝塚からはハマグリなどの二枚貝が出土し、竪穴住居跡、縄文土器も見つかっている。

村では調査を終えた貝の保管に頭を悩ませてきた。今回、焼き物に使用したのは国道125号の工事に伴う「大谷貝塚」の調査で出土した貝の一部。村文化財センターは土のう袋で5万袋に上る遺物を収集し、調査してきた。川村勝センター長は「未調査の袋がまだ3万袋近くある。調査を終えた貝もたまり、保管場所の問題で廃棄も考えた」と明かす。

村は2017年、陸平貝塚の保存活動に取り組む市民団体「陸平をヨイショする会」に相談。同会で26年にわたって縄文土器作りの体験教室を催してきた「縄文土器研究部会」と協力し、使い道の検討を始めた。

会員たちは砕いた貝を素材の粘土や化粧土に練り込むなどして試行錯誤を重ね、釉薬に混ぜ込むのが最適との結論に達した。村職員が笠間焼の窯元と交渉し、県立笠間陶芸大学校で貝の成分を調べ、窯で焼いた時の安全性も確かめた。

一連の焼き物は「陸平物」と名付けられた。タンブラー2個、小鉢、小皿、箸置きで1セット税込み7500円。箸置き以外は職人の手作りによる一点物だ。縄文土器の形状や模様を基に、色は縄文の海をイメージした青と黒。遺跡の貝の層をモチーフにした斜め模様や、縄文土器に見られる渦巻き模様などをあしらった。松葉統子部会長(79)は「縄文時代の人々の暮らしに思いをはせながら使ってもらえたら」と笑顔を見せた。

セットで販売される「陸平物」=美浦村文化財センター

 

陸平物は村文化財センターで販売している。本年度分は30セット限定。問い合わせは同センター(電)029(886)0291。