《食いこ》本屋製菓(水戸市)「吉原殿中」真心込め一筋

茨城新聞
2023年2月14日

水戸市東台。大通りから一本入った住宅地にひっそりと店を構える菓子店「本屋製菓」。創業以来、水戸の銘菓「吉原殿中」を一筋に手作りする。代々受け継いだ変わらぬ味を真心を込めて、お客さまに届け続けている。

同店の創業は昭和初期。約85年前という。現在は3代目の本屋光章社長(48)が、母、久子さん(73)や職人らと店を切り盛りする。久子さんは「初代から、水戸がある限り吉原殿中もなくならない。『お前らも頑張れ』と幾度となく励まされた」と明かす。

吉原殿中の誕生は、江戸時代にさかのぼる。水戸藩9代藩主、徳川斉昭に仕えた「吉原」という御殿女中が、農人形に供えた残りご飯を乾燥していって、あめときな粉をからめて作ったのが始まりと言い伝えられる。

水戸菓子工業協同組合によると、現在、市内では同店のほかに亀印製菓、あさ川製菓、吉田屋、郡司製菓工場、油屋老舗の計6社で作られている。一本の長さや太さに決まりはあるものの、各社それぞれの味わいが楽しめる。

材料は、国産もち米で作られた菓子種ときな粉、水あめと砂糖、水だけ。そこに長年培われてきた手技が加わる。工房に入ると、きな粉の香ばしい香りが漂っていた。

工房の奥では水あめ、砂糖、水で作られた熱々の「蜜」を菓子種に混ぜていた。水あめの硬さや水分量は、季節や気温、湿度によって違うという。「お客さまに同じ味を提供できるようにと、微調整している」と本屋社長は言う。

菓子種を混ぜ合わせたり、成形したりする工程は、この道約20年の職人、酒出正人さん(48)が主に担当。そこかしこに熟練の技が光る。中でも杉板で、きな粉を混ぜた菓子種をあっという間に約3メートル60センチの長さまで伸ばしていく工程には目を奪われる。「水あめが入っていて固まりやすいから手早く伸ばします」と、酒出さんは教えてくれた。出来たてをいただくと、程よい甘さときな粉の優しい味わいが広がった。

熟練の技で、形を崩さず切る

 

間もなく観梅シーズンを迎える。「水戸の土産物として、全国に吉原殿中の知名度を広めていきたい」。本屋社長は意気込んだ。

■お出かけ情報
本屋製菓
▽水戸市東台2の3の16
▽営業時間は午前9時~午後5時。土日祝日定休。
▽吉原殿中は9本入りから。
▽(電)029(221)2980