《旬もの》干し芋(茨城・東海村) キラキラ輝く冬の味覚
全国に誇る茨城の冬の味覚「干し芋」の生産が最盛期を迎えている。茨城県東海村豊岡の農園「干し芋農園 川上」もその一つ。干し芋の品質や技術を競う大会「第16回ほしいも品評会」のベニハルカの部門で今年初めて金賞に選ばれた農園だ。今月中旬に訪ねると、キラキラと金色に輝いた出来たての干し芋が行儀良く箱の中に並べられていた。
同農園は2019年設立。川上文隆社長(39)は会社員などを経て、「干し芋は地元の特産品。自分も挑戦したい」と村内で干し芋生産など手がけ、品評会で何度も入賞実績のある会社「テルズ」の門をたたいた。独立を視野に入れ、3年間土作りや加工方法などを一から学んできた。
品評会は、干し芋の生産農家や問屋などから構成される「ひたちなか・東海・那珂ほしいも協議会」が主催。「ベニハルカ」「タマユタカ」「希少品種」の3部門があり、同農園は3度目のエントリーでベニハルカの部門で初の金賞。さらに希少品種の部門では銀賞に輝いた。
同農園の一番のこだわりは、原料のサツマイモが育つ畑の土作り。村内の約40カ所、計約8ヘクタールの畑で栽培する。それぞれの畑で土の成分を分析し、おいしいサツマイモに育つようにと、土にぴったり合った肥料を選んでいる。「アルカリ性の土、酸性の土があり、1カ所ずつ違う」と川上社長。
原料には、甘味が強い品種「ベニハルカ」を主に使用する。昨年10~11月に収穫。その後、貯蔵庫でじっくりと熟成させ糖化させてきた。
干し芋作りは、冬の寒さが身に染みる早朝から始まる。午前6時にはサツマイモを蒸らし始め、皮をむき、薄くスライスしていく。トレイの上に手作業で1枚ずつ広げられ、専用の乾燥機で丸1日乾燥させていくという。「しっかり乾燥させないと甘味が引き出せない。逆に乾燥しすぎは硬くなる」。サツマイモの状態に合わせたさじ加減は欠かせない。
日々、家族や従業員と一緒に干し芋作りに精を出す。母の洋子さん(65)は「(会社の)名前を知ってもらい、おいしさを広めたい」と笑顔を見せた。川上社長は「お客さまのおかげでここまで成長できた。ありがたい」と感謝を口にした。今後は、同業者の若い世代と手を取り合い、干し芋でさらに東海村を盛り上げていくつもりだ。
■メモ
干し芋農園 川上
▽東海村豊岡1589の1
▽(電)029(352)3666/午前8時30分~午後5時/日曜定休。
▽原則予約販売のみ。ベニハルカの平干し(箱入り)は1キロ2700