「うつろ舟」史料紹介 水戸で企画展 目玉は「兎園小説」
茨城県ゆかりの江戸時代のミステリー「常陸国うつろ舟奇談」の史料を紹介する企画展「不思議ワールド うつろ舟」(茨城新聞社後援)が、水戸市備前町の常陽史料館で開かれている。「南総里見八犬伝」で知られる読本作家の滝沢馬琴らの書いた奇談集「兎園小説」(昭和女子大図書館蔵)や、同伝説と養蚕信仰との関係性を深めた「水戸文書」(個人蔵)など貴重な史料のほか、彫刻家や陶芸家によるうつろ舟をモチーフにした作品が展示されている。
同展では、県内外から集めた史料やパネルが並ぶ。目玉は、同館学芸員が企画展に向けた調査で昨年末に確認した「兎園小説」の11巻。「虚舟の蛮女」が収録されている。同史料の展示は初めて。鹿島神宮(鹿嶋市)の大宮司家が収集し、1987年に鹿島神宮から昭和女子大図書館(東京都)に移管されていた。
養蚕信仰を伝える「金色姫伝説」の金色姫と特徴が酷似する女性が描かれた「水戸文書」や文書作成日が書かれた「日立文書」(個人蔵)、「鹿島郡京舎ケ濱漂流船のかわら板ずり」(船橋市西図書館蔵)などもある。
彫刻家の北沢努さんや陶芸家の田崎太郎さん、高橋協子さん、水戸芸術館スタッフらによるうつろ舟をモチーフにした作品、史料発見など報じる過去の茨城新聞紙面なども並ぶ。展示に協力した、うつろ舟研究の第一人者で岐阜大名誉教授の田中嘉津夫氏のインタビュー映像も会場で放映されている。
同館の大曽根麻希子主任学芸員は「常陸国うつろ舟奇談は意外と地元では知らない人が多い。展示を機に多くの人に知ってほしい」と話す。
会期は3月19日まで(「日立文書」のみ2月19日までの展示)。入場無料。月曜休館。午前10時~午後5時45分。問い合わせは(電)029(228)1781。