木造阿弥陀如来座像を修復 力強い800年前の姿 茨城・かすみがうらの文殊院
■仏師が修復 1年ぶり、寺に戻る
茨城県かすみがうら市下志筑の寺院「文殊院」が所有する木造阿弥陀如来座像の修復が終わり、1年ぶりに寺に戻された。顔や体などの多くの部分が崩れたり欠けたりしていたが、専門の仏師の手によって、ほぼ800年前の制作時の姿によみがえった。寺院では「多くの人に見てほしい」と話している。
仏像は文殊院の境内にあった阿弥陀堂の本尊。高さ約1メートル、ヒノキ造りで、鎌倉時代に制作されたとみられる。阿弥陀堂が取り壊された後は本堂に移された。頭は顔の前面のみが残り、体の継ぎ目も緩んで隙間ができていた。像全体の表面もすり減って崩れている部分も多かった。
住職の黒沢彰哉(しょうさい)さん(69)は来年の弘法大師生誕1250年の慶さん事業に向けて修復を決め、同県美浦村の仏師、小松崎卓さん(73)に依頼。昨年10月に預けた。
仏像を見た時、「大変な仕事になる」と思った小松崎さん。まず仏像を解体して破損部分を確かめた。制作当初にあったとみられる金の塗料のほか、体内からは江戸時代の1708(宝永5)年に修理したと記した墨書が見つかった。
文化財の修復方法に基づき、細かい欠損は樹脂で埋め、大きな欠損はヒノキ材で新たに補充した。色も光沢を抑えて修復前の姿に近づけた。小松崎さんは「虫食いや欠損がひどく大変だったが、やりがいはあった。できるだけ元の部材を残すのが文化財修復の方法で、復元できて良かった」と振り返る。
仏像は10月26日に本堂に安置され、檀(だん)信徒出席の下、魂入れの法要が行われた。黒沢住職は修復された仏像について「大きく力強く、守られているという感じがする。歴史ある仏様を多くの人に見てもらえれば」と願った。