日本農業遺産目指す 常陸大宮、かんがい施設・江堰
江戸時代初期に造られ、現在まで受け継がれる常陸大宮市内3カ所のかんがい施設・江堰(えぜき)の日本農業遺産登録に向けて、同市が動き出した。本年度内に堰の管理者や用水路が通る自治体、大学など学術機関と合意形成。来年度に協議会を立ち上げ、全体像の骨子を組み立て、2018年度に農水省に登録申請する計画だ。県農村環境課によると、同遺産登録への動きは県内で初めて。
対象の江堰は、久慈川の辰ノ口堰、同堰の5キロ上流にある岩崎江堰、那珂川の小場江堰。これら江堰は江戸時代初期、水戸藩が干ばつ対策として造築を計画。永田茂衛門が1649年に辰ノ口、51年に岩崎、56年に小場を完成させた。以後、改修を重ねてきたが、用水路も含め、その位置はほとんど変わらない。
管理する土地改良区によると、辰ノ口堰は長さ233・8メートル。幹線用水路は常陸太田市粟原町まで延長約21キロで、受益面積1135ヘクタール。岩崎江堰は長さ114・5メートル。幹線用水路は那珂市門部まで同約23キロで、受益面積755ヘクタール。小場江堰は長さ120メートル。幹線用水路は那珂、水戸市を通り、ひたちなか市美田多町まで延長約32キロに及び、受益面積は1047ヘクタール。整備後、350年以上経過しても、水田を潤すかんがい施設となっている。
こうした歴史的資産の価値を高めようと、本年度に農水省が創設した日本農業遺産に着目した。同農業遺産は将来に受け継がれるべき伝統的な農林水産業システムを広く発掘、価値を評価。多様な主体の参画で、地域活性化や農産物への付加価値・ブランド力の強化が期待され、世界農業遺産登録も視野に入れる。
登録申請に向け、本年度は施設を管理する各土地改良区、常陸太田、那珂、水戸、ひたちなかの4市、大学教授らと登録への合意を図る。来年度には協議会を設立して、申請書類作成などに入り、2018年度の申請を目指す。市農林課の篠田義広課長は「日本農業遺産は世界農業遺産に直結している。文化や生物多様性などハードルは高いが、農業遺産登録に動き出す」と話した。
★世界農業遺産
2002年、国連食糧農業機関が主として途上国向けの支援対策として始めたプロジェクト。伝統的な農業・農法と、それによって育まれた文化や土地景観、生物多様性に富んだ世界的に重要な地域について、それらの保全と持続的な活用が図られることを目的とする。15カ国36地域、日本は8地域が認定されている。
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