《路線バス 終点を行く(6)》上平(藤岡) 助け合い暮らす山里
ㅤ平家の落人伝説が残る藤岡市上日野と市中心部を結ぶバス路線、藤岡―上平線。四方に山が迫る終点の「上平」集落は鮎川のせせらぎの中、静かにたたずんでいた。
ㅤ日野地区は、平家の末裔(まつえい)とされる小柏氏が勢力を広げ、江戸時代には良質な「日野絹」の産地として知られた歴史を持つ。現在の神流町や甘楽町と接しており、人、物の交流が峠道を介して盛んだったという。
ㅤ養蚕、林業が多くの人の生活を支えていた旧日野村だが、産業構造の変化もあり、日野地区の人口は合併した1955年の約5千人から約1500人にまで激減。商店も多くが姿を消し、行商のトラックを頼りとする住民もいる。
ㅤ「日野谷十里」と呼ばれ、渓谷沿いに奥深く広がる集落には独居の高齢者が多い。このため住民団体「日野の明日を考える会」(小暮満会長)が救急車両を常駐してもらえるよう署名を集め市に要望、2004年に救急車と消防車の平日の配備が実現した経緯がある。小暮会長(71)は「存続が難しい集落もあるが、不便でも愛着があって離れられない」と助け合いながら暮らす住民の思いを代弁した。
ㅤ終点周辺を散策すると、集落を見下ろす場所にある「小柏上平道」にたどり着いた。完成記念碑によると、住民が生活道として自力で切り開き、熱意に動かされた市や県の協力を得ながら2001年に完成させたという。ここにも住民の結束の跡があった。
【藤岡―上平線】藤岡市から委託を受けた上信観光バスが運行する。ららん藤岡から中心街を経由し、日野地区の工芸体験施設「土と火の里公園」でも停車する。始発から終点までの所要時間はおよそ1時間。
地図を開く | 近くのニュース |