アニメ「よりもい」ファンに親しまれた、群馬・館林市の老舗「大島まんじゅう屋」が閉店 86年の歴史に幕
群馬県館林市赤生田町の老舗和菓子店「大島まんじゅう屋」が9月26日に閉店する。コロナ禍による売り上げの落ち込みや、店番をしてきた店主・大島一希さん(50)の両親の高齢が要因だ。同市を舞台にしたアニメ「宇宙(そら)よりも遠い場所(通称・よりもい)」にちなんだ商品を販売し、ファンに愛された同店。切り盛りする3代目の大島さんは「多くの人の心に、思い出として残ってもらえれば」と話している。
大島まんじゅう屋は、1936年に大島さんの祖父・一郎さん(故人)が開業した。当時から添加物不使用を一貫し、3代にわたってまんじゅうや草餅などを販売し、地域に愛された。
大島さんが父・一男さん(83)から店を継いだのが約20年前。こだわったのは和菓子の中に「洋」を取り入れることで、どら焼きの中にチーズクリームを挟んだ「チーどら」(170円)など、若者も楽しめるメニューを次々に開発した。
4年前、よりもいの作中に登場する南極観測船にちなんだ「ペンギンまんじゅう」(6個入り1512円)の販売を始めると、全国からファンが訪れるようになった。店内にグッズコーナーを設けたところ、ファンが手書きのイラストを持ち寄り、交流ノートは2冊目に入ったという。
しかし、コロナ下で冠婚葬祭向け商品の売り上げが激減。両親が高齢になり、今後店番を任せられなくなることも見据え、閉店を決めた。8月21日にツイッターで閉店を発表すると惜しむ声が寄せられ、翌日から来店が相次いだという。「残念」「続けて」との声もあったが「申し訳ないが決めたこと」と決意は揺るがなかった。
大島さんは、アニメがつないだ縁に感謝する。地元に根差した小さな和菓子店に、全国から客が訪れるようになった。中には北海道や西日本から、はるばるバイクや自転車で旅してきた人も。「全国からお客さんが来てくれて、いろいろな話をできたのがうれしかった」と振り返る。
「90年間続けたい」との目標はかなわなかったが、閉店までの約1カ月、新商品を置いたり販売終了した商品を復活させたりして、店の味を提供し続けるという。大島さんは「今までの感謝を込め、材料が尽きるまで作りたい」と話している。
営業は午前8時半~午後5時半。月曜定休(最終日の9月26日は通常営業)。