復元障壁画を初披露 構図に試行錯誤の跡 4月17日まで 天心邸に大観、春草描く

茨城新聞
2022年2月27日

茨城県北茨城市大津町の県天心記念五浦美術館で、旧岡倉天心邸書斎の壁3面を飾っていた復元障壁画が初披露された。同館で開催中の企画展「おいでよ!花鳥画の世界」会場内特設スペースで4月17日まで展示されている。

初披露された襖絵などの障壁画。竹や杉、菊などがモチーフになっている=北茨城市大津町

 

障壁画は、1905年に建てられた五浦の岡倉天心(1863~1913年)邸の書斎にあった襖絵(ふすまえ)と書院や袋戸の板絵など。関係者らの証言によれば、日本美術院の五浦移転に伴い、同地に移住していた横山大観や菱田春草が描いたとされた。

復元は、同館が2020年から取り組んだプロジェクト。東京芸術大大学院教授の荒井経さん(54)が協力した。大観と関係の深い個人宅から見つかった障壁画一式の小下図(下絵)が復元の根拠となっている。

調査を始めた荒井さんは、当時の画材を分析し、図柄や寸法などを検討。描写の面ではモチーフとなった竹、杉、菊それぞれの筆遣い、金泥と墨のバランスに加え、再現に不可欠な紙などの選定に苦労した。

「五浦時代の大観や春草は、朦朧(もうろう)体と呼ばれる画風から、欧米漫遊を経て琳派的な表現に向かう過渡期にあった」とし、「いずれにも偏りすぎない状態を想定した」という。

木立の手前に杉の若木を配した襖絵の構図は、五浦から東京に戻った春草が描いた「落葉」に通じる。中央部にある金色のボーダーラインの意味は「謎」のままだが、天心の奇抜な発想のもとに大観や春草が試行錯誤した様子がうかがえ、「今後の研究の手掛かり」とみる。

復元障壁画は同展終了後、岡倉天心記念室内での常設展示を計画している。

「おいでよ!花鳥画の世界」は午前9時30分~午後5時。月曜休館(3月21日は開館、22日は休館)。一般420円、満70歳以上210円、高大生210円、小中生160円。