《ググッと茨城県西・記者探訪記》 興味深い泉石の史料 散策、施設訪問もお勧め 古河市・古河歴史博物館の常設展

茨城新聞
2020年10月18日

古河歴史博物館(歴博、古河市中央町3丁目)が、11月3日に開館30周年を迎える。常設展示室は3室。展示品は約2カ月間ごとに入れ替えられ、古河藩家老の鷹見泉石(たかみせんせき)(1785~1858年)が収集した史料や女流南画家の奥原晴湖(1837~1913年)の書画などが興味深い。歴博の常設展示に着目した。

▽建築学会賞を受賞

明治末期から昭和初期にかけての渡良瀬川改修により、大部分が取り壊された古河城。その土塁や堀の面影を残す出城(諏訪曲輪(くるわ))跡に歴博はある。建築家の故吉田桂二氏が設計。周辺の景観修復と合わせて評価され、1992年に日本建築学会賞を受賞した。

旧古河市は72年から約16年にわたり、市史編さん事業を実施。歴博はその史料や調査、研究成果の発表の場として、90年に開館した。常設展示は文化財保護法に基づき約60日間で入れ替えられ、訪れるたびに違った史料を鑑賞できる。

古河文学館や鷹見泉石記念館、奥原晴湖画室が隣接し、周囲や近隣には石畳で整備された街路、古河一小学校の赤れんが造りの校門「赤門」、篆刻(てんこく)美術館などもある。周囲の散策や施設訪問もお勧めだ。

▽3000点の重要文化財

歴博の第1展示室は鷹見泉石がテーマ。泉石は蘭学者でもあり、江戸幕府の老中を務めた“雪の殿さま”土井利位らを補佐するため、国内外の情報や資料を収集・分析した。同館所蔵の泉石資料は1万3033点。そのうち3151点が国重要文化財に指定される。

同室では、泉石の生涯や業績を紹介。日本初のオランダ地図「新訳和蘭(おらんだ)国全図」の版木や、江戸-日光間の宿場町の距離早見表「日光駅路里数之表」などが興味を引く。

21日までは、太陽暦の正月に合わせて蘭学者が開いた「新元会」の日記や皿、ナプキンなど関連資料約50点を展示。泉石が思想家の佐久間象山にコーヒーを渡したことや当時のオランダ料理などが分かり、鎖国下でも蘭学者たちが外国情報を入手して情報交換していたことがうかがえた。

▽制作過程も鑑賞可

第2展示室のテーマは「古河の通史」。城下町の基礎をつくった古河公方(くぼう)、茨城県最初の藩校「盈科(えいか)堂」、足尾鉱毒事件の田中正造を支援した人々、1885年開設の古河駅など、各方面から古河の歴史や人物を知ることができる。

第2展示室にある失われた古河城の再現模型。現在の地図と比べたり現地を歩いたりして変化を知るのも楽しい

カキとシジミの貝殻が同時に確認できる「原町西貝塚」(同市鴻巣)の断層は約6千年前、古河に海水が入り込んでいた証拠。古河城模型は失われた城の全容を再現したもので、人々の様子には遊び心ある工夫もあり、見つけ出す楽しさもある。

第3展示室は、幕末・明治期の絵師、河鍋暁斎(かわなべきょうさい)(1831~89年)をはじめとした古河の文人たちを紹介。現在は「南画の秋」と題し、奥原晴湖の作品を展示している。清湖は拠点とした東京と熊谷で作風に変化が見られるが、歴博では制作過程の下描きに当たる「粉本」も並べ、完成作品と一緒に鑑賞できるのも大きな特徴だ。

コロナ禍により中止していた企画展も、来年から再開の予定。1月9日からは渡辺崋山筆の国宝「鷹見泉石像」などが展示される。立石尚之館長(57)は「歴博はいつ来ても違った史料が鑑賞でき、1日だけでは終わらない。リピーターになってくれればうれしい」と話した。

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