漁網素材タオル人気 茨城・大洗の川上さん発案 泡立ち抜群
漁網と同じ素材で作られたボディータオル「背中洗い網」が人気だ。抜群の泡立ちや硬めの肌触りで、販売数は多い月で5000本を超える。商品を手がけるのは、シラスなど船引き網漁で使う網を製作する「川上漁網」(茨城県大洗町磯浜町)。2代目店主の川上文男さん(74)が地元漁師の生活の知恵をヒントに編み出した看板商品は、漁網店が姿を消しつつある中、脚光を浴びている。
背中洗い網は、イワシ類を捕る巾着網と同じナイロン製で一つずつ手作りしている。しっかりした洗い心地が特長で、網のつなぎ目となる丸い節には、きめ細かい泡を生む効果があるという。漁網を染め上げて、赤や紫、ライトグリーンなど鮮やかな6色をそろえる。
同店は1962年創業。川上さんは高校卒業後、同県水戸市内の企業に勤めた後、父・直次さんの下で修業を積み、42歳で家業を継いだ。現在は東北から関東まで約100軒の漁業者と取引がある。船の大きさや馬力に応じて個別に漁網をあしらえる丁寧な仕事ぶりで、修理の依頼も絶えない。
しかし、漁業を巡る環境は次第に変化。川上さんによると、漁法の変化や後継者不在、スポーツ用品への切り替えなどで、県内の漁網店は、40年で22店から6店ほどに減ったという。
背中洗い網が誕生したのは2007年。茨城県沖のシラス漁をはじめ、取引のある漁業者らが深刻な不漁に陥り、修理や製造の依頼が減少。「作って直すだけでは(家業が)危ない」と対策を練る中、漁網の切れ端で体を洗うという知人漁師の言葉が脳裏に浮かんだ。
早速ボディータオルに仕立て、最初は知人などに販売していたが、同市の問屋から商品化の提案が舞い込んだ。色を増やして包装も一新させて温泉施設などに販路を広げると、1カ月で5000~6000本を売り上げる爆発的な人気となった。
新型コロナウイルス禍では1本も売れない月があったものの、現在は回復しつつあり、年末年始の贈答用として漁業者からの注文も相次いでいる。
背中洗い網だけにとどまらず、足の指用の姉妹品も誕生。さらに、ファスナーメーカーと共同開発した害鳥よけのごみ収集ネットは、各地の町内会で採用されているという。
川上さんは「昨日と同じものを作り続けるのではなく、挑戦する網屋でありたい」。漁網を生かした商品アイデアはこれからも広がっていく。