江戸絵画のスーパースターが“競演” 栃木県立美術館で谷文晁&葛飾北斎展、10月21日から
江戸後期に活躍した2人の絵師、谷文晁(1763~1840年)と葛飾北斎(1760~1849年)を紹介する「文晁と北斎-このふたり、ただものにあらず」が21日、栃木県立美術館(宇都宮市桜4丁目)で開幕する。栃木県誕生150年、下野新聞創刊145周年の記念展。ほぼ同時代を生きた関東南画の祖と奇才の浮世絵師-。一見、異種配合のような企画展は、2人の意外な共通点も浮かび上がらせる。
出品数は両者約半分ずつの87件。文晁は初公開の「東海道・中山道・木曽街道真景図巻」など、北斎は初公開を含む肉筆画のほか、「グレートウエーブ」で世界に知られる「神奈川沖浪裏」など「冨嶽三十六景」全46図(半期ずつ展示)もそろえた。「県内でこれほどまとまって北斎の作品が見られる機会はまずない」と同館の橋本慎司副館長兼学芸課長は胸を張る。
現那須塩原市出身の高久靄厓の師であり、栃木県とも関係の深い文晁は、江戸下谷の文雅の家に育ち、和漢洋にわたる画法を取り入れた。独自の南画で一家を成すとともに、老中松平定信の命を受け、全国規模の調査、取材を行い「集古十種」「公余探勝図巻」にも携わっている。
いわば正統派の大御所である文晁に対し、庶民を熱狂させたのが同じ江戸に生まれた北斎。波頭が砕ける瞬間を捉え波の裏側を描くという大胆な発想は、幕府の奢侈禁止令下の窮屈な世を生きる市井の人々の心を捉え、絶大な人気を博した。
橋本さんは「文晁と北斎は、まさに官と民の両雄ともいえる江戸絵画界二大ブランド。当時のスーパースターだった」と説く。
同展は4章構成で2人の画業をたどりながら、生まれた場所や活躍した時代のみならず、飽くなき探求心や晩年まで衰えなかった創作意欲など、共通する部分を浮き彫りにする。“ただものでない”この絵師たちは同時代の目にどう映ったのか、そんな想像をしながら見るのも面白いだろう。
12月24日まで(月曜休館)。観覧料一般千円、大高生600円、中学生以下無料。