《食いこ》野村甘露煮店(茨城・古河市)  調理法生かし魚から肉へ

茨城新聞
2023年1月25日

JR古河駅西口から徒歩3分。七軒町通りにたたずむ、1902(明治35)年創業の老舗「野村甘露煮店」(茨城県古河市)。フナの甘露煮の調理技術を生かした「豚の甘露煮」が新たな看板商品に加わり、人気を集めている。

創業約120年の野村甘露煮店

 

開発を手がけたのは、4代目社長の野村則之さん(50)だ。「(フナの甘露煮を購入する)お客さんは高齢者が多い。若い世代にも好まれる商品を作りたかった」

幾度となく試行錯誤を重ね、完成までに約10年を費やした。同店には長年継承されてきた形を崩さず骨までやわらかく煮る調理法がある。「豚の甘露煮にも通じる」。魚から肉へと素材を変えてみることで、販路拡大を目指した。

味の決め手となる自家製のたれはしょうゆ、みりん、砂糖、水あめとシンプル。「豚肉に合うように調味料の分量の配分を変えた」

豚肉は、主に古河市産の県銘柄豚「常陸の輝き」を選んだ。野村さんは「脂身に甘味があり、赤身がやわらかい。これなら、喜んで食べてもらえるかもしれない」と手応えを感じた。

厨房(ちゅうぼう)を訪ねると、甘じょっぱい香りが漂っていた。豚の甘露煮は、ほぼ毎日約10キロを仕込むという。大鍋の中では、ぐつぐつと音を立てながら豚肉が煮込まれていた。弱火でじっくりと約4時間煮込む。その後は、味を染み込ませるために冷蔵庫で一晩寝かせ、真空パック詰めにし、完成させるという。

一口いただくと、豚肉に自家製たれが染みわたり、深みのある味わい。野村さんの「お箸で切れる」との言葉通り、ほろほろと溶けるようにやわらかだった。

昨年5月の発売以降、20代、30代の来店が目立つようになった。店を一緒に切り盛りする妻の恵利子さん(47)は「魚離れが進む中、(豚の甘露煮が)店を知ってもらう商品に成長し、とてもうれしい」と喜ぶ。長年親しまれてきた伝統の味を食卓から消さないよう、「50年、100年後も名物として残したい」。そのためにも、新たな経営の柱としてさらなる商品開発に挑むつもりだ。

■お出かけ情報
野村甘露煮店
▽古河市本町4の3の14
▽営業時間は午前8時30分~午後7時。月曜定休
▽豚の甘露煮は648円(税込み)~。
▽(電)0280(32)0882