「夜のピクニック」音楽劇に 青春の絆、思い描く

茨城新聞
2016年2月2日

 茨城県立水戸一高の伝統行事「歩く会」を題材にした小説「夜のピクニック」が、音楽劇として9月に水戸芸術館(同市五軒町)で上演される。本県出身の歌手で女優の吉川友(きっかわゆう)さん(23)が主演を務めるほか、出演者を広く募り来月下旬、オーディションを開く。同校出身の映画監督、故深作欣二さんの長男で演劇や映画などで活躍する深作健太さん(43)が演出を務める。深作さんは、「(歩く会の)地元で手掛けられることは喜びであり、大きな挑戦」と意気込んでいる。

小説「夜のピクニック」は同校出身の恩田陸さんが自らの体験を基に執筆した。2004年に刊行。千人を超える高校生が80キロの道のりを夜通し歩く「歩く会」を題材に、疲労が頂点に達した時の心情や絆、淡い恋心をみずみずしくつづった。第2回本屋大賞、第26回吉川英治文学新人賞を受賞するなどベストセラーとなった。
今回の舞台化は、同館演劇部門の高橋知伽江芸術監督が地元題材の演目として温めてきた。昨年10月には、石岡-水戸間で実施された同校の「歩く会」を深作さんと共に取材し、夜間歩行や休憩時の生徒たちの様子などを肌で感じた。
高橋監督が脚本を担い「生徒や先生、父母、OBらによって受け継がれる伝統行事。守り続ける意味を反映させたい」と、歩く会に対する卒業生ら関係者の思い入れに敬意を込める。
深作さんは、歩く会を取材した感想について「青春の熱量の低下が指摘される現在、生徒たちが真摯(しんし)に取り組んでいる姿に驚いた」とし、「恩田さんの作品は、夜間歩行という行事の中で全てを懸ける青春の普遍性を備えている。1晩の物語の中で、あふれる言葉と語られなかった言葉をつむぎ、音楽劇という形で刻みたい」と抱負を語る。
歩く会に参加する生徒役の吉川さんほか、生徒の母親役と舞台の語り部役を元宝塚女優の剣幸(つるぎみゆき)さんが務める。舞台音楽は、ピアニストの扇谷研人(おおぎやけんと)さんが作曲・編曲し、生演奏で出演者の気持ちを表現していく。公演は9月17~25日(全8回)の予定。

■来月オーディション
水戸芸術館では、音楽劇「夜のピクニック」の出演者オーディションを3月22日に開く。募集人数は20人。役は原則として高校生。応募条件は稽古と本番に参加できる20~40歳までの男女。締め切りは3月8日。問い合わせは同館(電)029(227)8111

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